NHK放送技術研究所は,世界で初めて電子注入の動作機構を解明するとともに,日本触媒と更なる高性能化が可能な新規電子注入材料を開発した(ニュースリリース)。
NHKこれまでフレキシブルディスプレーの長寿命化・省電力化に向けて、陰極から発光層に電子を注入する電子注入層の材料を開発してきた。
有機ELでは,発光層に電子を注入するため,陰極と発光層の間に存在する約2eVのエネルギー差をゼロにする必要がある。今回,新たに開発した電子注入材料により,陰極や有機材料との化学結合を利用して,エネルギー差をゼロにできることに成功した。
さらに,従来の有機ELにおける電子輸送材料は,電子を輸送する役割よりも,エネルギー差を約1eV減らす役割が大きいことを解明した。これらの発見によって,新規電子注入材料を用いれば,電子輸送材料を必要とせず,発光層に直接電子を注入できることがわかった。
この新規電子注入材料は有機ELの長寿命化,省電力化に寄与できるだけでなく,従来必要とされた電子輸送材料が不要になることで有機ELの構造を簡素化できるという。
NHKでは今後も,巻き取りや折り曲げができる大画面フレキシブルディスプレーの実現を目指し,有機ELの研究開発を進めていくとしている。