東北大学,米シカゴ大学,米アルゴンヌ研究所,ハンガリー ブダペスト工科経済大学,中国阿城大学らは,固体中のスピン中心の量子ビット応用に必要な物性をまとめ,今後材料工学等によりもたらされ得るブレイクスルーを系統的に示した(ニュースリリース)。
量子コンピューターが商用レベルで実用化されるなど,量子現象がますます身近なものになりつつある。
固体中のスピン中心は,量子コンピューターを構成する「量子ビット」と呼ばれる量子情報担体を構成する物理系の中でも,室温で量子情報を保持可能であり,大きな注目が集まっており,多様な量子現象を実験実証するプラットフォームとして利用されてきた。
研究グループは,スピン中心を量子応用する際に注目すべき物性,特に①スピン特性②光学特性③電荷特性等を系統的に整理し,これらがどのように実現されてきたのか,今後どのような課題に取り組む必要があるか,更にどのような材料がスピン中心として有望かを包括的に示した。
固体スピン中心の物性は,多くの場合スピン中心とそれを覆う母体材料や隣接材料が複雑に影響を及ぼし合い,様々な機能性を創出する。量子ビット向け固体スピン中心においては,位相緩和時間は母体材料により支配的に決められることが分かってきた。
また,最新の研究報告に基づき,ダイヤモンドや炭化シリコン(SiC)といった,実験報告のある材料に加え,これまでに実験報告のない機能性材料についてもその位相緩和時間を示した。
論文では,この他にも様々なスピン特性,加えて,光学特性,電荷特性,材料工学上の観点からの特徴と,今後期待されるブレイクスルー等を系統的に示したという。
今後実現されることが望まれる機能性や,研究上の課題とブレイクスルーの可能性についてまとめたこの研究成果により,量子ビット研究周辺の研究分野での知の共有を加速し,スピン中心を用いた高性能量子コンピューター,量子センシング,量子通信の開発がより一層加速されることが期待されるとしている。