東北大,分子吸着で磁石になる多孔性材料を開発

東北大学とリガクは,ベンゼンなどの小分子を吸着させることで,磁石でない状態から磁石へと変換する新たな多孔性材料の開発に成功した(ニュースリリース)。

従来の磁性体では実現不可能であった機能を発現する磁石や,磁石のON/OFF機能を併せ持つ磁石の開発が注目されている。

研究グループでは,金属イオンと有機配位子の複合化によって合成される金属錯体を基にした多次元格子「金属・有機複合骨格(Metal-Organic Framework,略称:MOF)」と呼ばれる分子性多孔性材料に注目してきた。

MOFの特徴である“空間”という概念を付加して磁石を作ると,今回の研究で発表した「多孔性分子磁石(MOF磁石)」となる。このMOF磁石を用いて,研究グループはこれまで,酸素や二酸化炭素の吸脱着による磁石のON-OFF制御,すなわち「小分子吸着に伴う磁石オフ」に成功してきた。

しかしながらこの逆の変化である,「小分子吸着に伴う磁石オン」はこれまで達成されていなかった。また,吸着分子により磁石の状態(磁気秩序状態)を変える多孔性材料はなかった。

今回開発した材料は分子性多孔性材料の一種で,層状構造になっており,その層の間にベンゼンなどの小分子を出し入れできるのが特徴。元々,この分子性多孔性材料は磁石としての性質を持たない(常磁性状態)。しかし今回,ベンゼンやジクロロメタン,キシレンなどの有機小分子を吸着させるとフェリ磁性体になることを確認したとする。

逆に,吸着させた小分子を脱着させることにより元の常磁性体に戻る。一方で,二硫化炭素を吸着させた場合には,反強磁性体という,ベンゼン等の場合とは異なる磁気秩序状態へと変わることも見出した。

この現象は,小分子が分子格子の構造変位を伴って包摂状態を安定化させることにより,分子格子の電子状態が包摂前後で変化することにより生じるもの。これまでに小分子の吸着により,磁石でないものを磁石へと変換した例はなかったという。

このような材料は,化学的刺激により駆動する新たな分子デバイス創製に繋がることが期待される。加えてこの結果は,化学物質の持つ多様性が直接その物理特性に反映される,すなわち“物質による物性制御”を実現したという点で,基礎・応用の両面から大変意義深い結果だとしている。

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