公大ら,多孔質に分子が詰まっていく様子を観察

大阪府立大学大学院と大阪公立大学大学院は,多孔質材料に分子が詰まっていく様子をリアルタイムで観察することに成功した(ニュースリリース)。

ナノからメソサイズ(1nm〜50nm程度)の孔を大量に有する「多孔質材料」は,単位質量あたりの表面積が大きいことから,循環型社会を実現するキーとして環境有害物質(揮発性有機化合物(VOCやCO2などのガス)の除去や材料合成時の触媒として利用されており,原発事故における放射性物質除去でも活躍したことで広く知られている。

多孔質材料の中でも,金属有機構造体は,サイズのそろったナノ孔が規則正しく整列しており,表面積も非常に大きい(1gでサッカーグラウンド程度の表面積を示すものもある)ため,次世代の多孔質材料として注目されている。

これまでの研究で,多孔質材料の小さな孔に特定の分子が捕獲できることは広く知られていたが,分子が孔に入っていく様子や孔の中での配置については,放射光施設を用いた大規模実験を行なわなければならず,実験的に解析することが非常に困難であり,高効率な分離・触媒多孔質材料の実現の課題となっていた。

研究グループは,赤外光吸収分光法を用いることで孔の中の分子を簡便かつ高効率に検出できることに着目し,偏光した赤外光を用いることで多孔質材料中の分子の配向を検出できることを2021年に報告している。

今回の研究では,偏光赤外分光法を分子吸着法と融合することで,リアルタイムにナノ孔に分子が吸着していく様子や孔の中での分子の配置や向きの情報を得る手法を新たに開発。測定したいガスの分圧を調整できるチャンバーを用いたガス吸着測定と偏光赤外分光法を同時に行なうことで,分子の吸着挙動をリアルタイム測定した。

具体的には,汎用型の赤外分光装置に,三次元プリンターで作製した簡易なアタッチメントを実装した装置を用いて,金属有機構造体中に分子が入っていく様子と孔の中での分子の向きや場所を,リアルタイムで精密に検出することに成功した。

その結果,狭い孔の中に分子を詰めていくと,いわゆる「オイルサーディン缶効果:イワシの缶詰の中でイワシが整列するように,分子が向きをそろえて規則正しく並ぶことでナノ空間を有効に利用する効果」を実証した。

この研究成果により,ナノサイズの孔の中に分子が規則正しく並びながら詰まっていく様子が明らかになり,研究グループは,ハウスダストや大気汚染の原因となる有害物質のみをターゲットとした選択的除去や優れた触媒の開発に貢献することが期待されるとしている。

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