日本電信電話(NTT)と,富士通は4月26日,「持続可能な未来型デジタル社会の実現」を目的とした戦略的業務提携に合意したと発表し,NTT代表取締役社長の澤村純氏と富士通代表取締役社長の時田隆仁氏が会見を行なった(ニュースリリース)。
今回の業務提携では,光技術をはじめとした通信技術や運用ノウハウと世界一のコンピューティング技術など,両社の強みが活かせる分野において共同研究を進め,低エネルギーで高効率,かつ持続可能なデジタル社会を実現し,両社で共有するビジョンの具現化をめざす。具体的な取り組みは以下の通り。
(1)光電融合製造技術の確立
NTT R&Dの先端デバイス技術を活かしたハードウェア製品を開発する,NTTエレクトロニクス(NEL)は,半導体実装技術を有する富士通アドバンストテクノロジ(FATEC)の66.6%の株式を富士通から6月1日に取得しNELの子会社とする。同日よりFATECは「NTTエレクトロニクスクロステクノロジ」として事業を開始する。
具体的には,NELの論理設計にFATECの実装設計技術と試作技術が加わることで,今後キーとなる光電融合技術を用いた半導体開発の加速を期待する。
NTTエレクトロニクスクロステクノロジはまず,デジタルコヒーレント光通信用LSIおよびシリコンフォトニクス技術によるCOSA(Coherent Optical Sub Assembly)を一体化した,光電融合技術を用いた小型で省電力な,高性能光通信用コパッケージを2022年度内に提供開始する。
続いて2024年には光・電子子パッケージ,2025年にはチップ間光伝送,最終的にはチップ内のコア間光通信,チップ内の光信号処理を可能にした光電融合コンピューター技術を2030年以降に実現したい考えだ。
また,Beyond 5G向けに,超高速で小型かつ低コストな光電融合デバイスおよび基地局に搭載するためのアーキテクチャーを両社で検討し,幅広く提供することをめざす。さらに,光電融合技術を,コンピューティング向け半導体など,様々な用途に拡大することで,低エネルギーで高効率なICTシステムの実現をめざす。
(2)通信技術(光通信およびモバイル)のオープン化の推進
NTTと富士通は,通信機器市場における特定ベンダに依存する垂直統合モデルからの脱却,そしてホワイトボックスや汎用ソフトウェアをマルチベンダで対応するオープン化を加速する。
光通信では,両社はアーキテクチャーのオープン化を前提とした新たな光デバイスの企画から,システム製品の開発,サプライチェーンマネジメントまでを共同で行ない,オープンアーキテクチャーの採用が活性化しているデータセンター向けの通信市場へ戦略的に参入し,グローバルでの事業拡大をめざす。
また,モバイルでは,NTTドコモを中心に発足した「5GオープンRANエコシステム」などを通じて,様々なパートナーとともにグローバルに展開可能な技術などの開発を行なう。NTTは,それらの技術を用い,5Gの本格展開に向け,モバイルネットワークの基盤を高度化する。両社の連携によって開発された機器は,「5GオープンRANエコシステム」などを通じて,グローバルに通信事業者への展開を図る。
これらの活動は様々なパートナーとオープンに取り組む。NTTと富士通は,それらに積極的に参加し,生み出された研究成果を光通信/モバイルの事業で活用することで,グローバルでの市場拡大をめざす。
(3)低消費電力型・高性能コンピューティング(ディスアグリゲーテッドコンピューティング基盤)実現に向けた共同研究開発
NTTと富士通は,高速化や省電力化に課題のある従来のコンピューティングアーキテクチャーを抜本的に見直し,使用用途に応じて多様なハードウェアをソフトウェアで柔軟に組み合わせて活用することで,高速かつ高効率なデータ処理を行うなディスアグリゲーテッドコンピューティングの技術の実現に向け,研究開発に取り組む。
具体的には,NTTの光電融合技術と,スーパーコンピュータ「富岳」などにも活用された世界最先端の富士通のコンピューティング技術を組み合わせることで,革新的なコンピューティング技術を開発する。この技術により,様々なパートナーが価値を創出するサービスを効率よく実現できるだけでなく,電力効率を最大化し,持続可能な社会に貢献することをめざす。
富士通では,IOWN構想や6G時代の技術開発を目的として,「IOWN/6Gプラットフォーム開発室」を2021年4月1日に新設している。今後,両社はこの提携のもと,さらなる取り組みの具体化を協議するとしている。