阪大,世界最高効率で麦芽糖の水素化反応に成功

大阪大学の研究グループは,麦芽糖(マルトース)から還元麦芽糖(マルチトール)への水素化反応において極めて高い活性を示す非貴金属合金ナノ粒子触媒を開発した(ニュースリリース)。

食品添加物や甘味料として使われるマルチトールは,高付加価値の機能性化学品として,同じ糖アルコールであるソルビトールに次ぐ需要を持つ。マルトースの水素化反応は,マルチトールを合成する最も重要な反応となる。

従来の工業的なマルトースの水素化反応では,主にスポンジニッケル(ラネーニッケル)が触媒として用いられているが,大気中で自然発火性があるため取り扱いが難しく,容易に失活するという問題がある。また,この触媒は活性が低いため,数十~数百気圧の高圧水素ガス下,高温の厳しい反応条件下で行なう必要がある。そのため,発火性がなく,取り扱い容易で,さらに高活性な非貴金属触媒反応系の開発が求められていた。

今回,研究グループは,安価で入手容易な非貴金属であるニッケル,およびリンを合金化したナノ粒子(nano-Ni2P)を合成し,さらにnano-Ni2Pを無機物であるハイドロタルサイト(HT: Mg6Al2(OH)16CO3·4H2O)に担持した触媒(nano-Ni2P/HT)を開発した。

この触媒は大気中において安定で,温和な反応条件下でマルトースの水素化反応に高活性を示すことを見出した。例えば,世界で初めて,常温下(25℃)においてマルトースの水素化反応が進行するという。また,貴金属であるルテニウム触媒に匹敵する触媒性能を持つこともわかった。

さらに,この触媒は実用的な観点から重要である高濃度のマルトース溶液(>70wt%)にも適用できる上,反応溶液から容易に分離ができ,回収した触媒を再びマルトースの水素化反応に用いても触媒活性の低下は見られず,高活性を維持したまま繰り返し使用可能だとする。

nano-Ni2P/HTは従来の触媒とは異なり,大気中において安定であり,従来のマルチトール製造法で用いられる触媒に比べて極めて高い触媒活性を示し,さらに温和な条件下で反応を促進する。また,固体触媒であるため触媒の回収・再使用が簡単に行なえるという利点がある。

研究グループは,この触媒を応用することで,現行の実用水素化反応を代替する,安全かつ環境に優しい次世代型触媒プロセスの開発の提案につながるとしている。

その他関連ニュース

  • 東工大ら,可視-近赤外に反応する新規光触媒を開発 2024年03月12日
  • JASRIら,X線小角散乱法で触媒の白金粒子だけ可視化
    JASRIら,X線小角散乱法で触媒の白金粒子だけ可視化 2024年02月26日
  • 豊技大ら,酸化亜鉛ナノパゴダアレイ光電極の開発 2023年12月18日
  • 九州大,光バイオ触媒でアンモニアと水素を同時合成 2023年11月17日
  • 三菱重工,光触媒活用の米水素技術ベンチャーに出資 2023年10月11日
  • 名工大,新しい太陽光水素生成の方法を開発 2023年09月14日
  • 理研,高効率な水電解水素発生触媒を発見 2023年08月22日
  • 京大ら,水素分子の分光計測から回転温度を評価 2023年07月31日