東京大学の研究グループは,超薄型有機太陽電池で自立駆動する,柔軟な皮膚貼り付け型光脈波センサーの開発に成功した(ニュースリリース)。
柔軟な有機EL(OLED)は曲面ディスプレー,折り畳み可能なスマートフォンなど,幅広く応用されている。近年では,ウェアラブルデバイスやヘルスケアに向けたウェアラブル光源応用も注目されており,例えば,光による脈拍センサーや,血中酸素濃度を計るパルスオキシメーターなどが開発されている。
特に,超薄型で柔軟な有機ELは,皮膚貼り付け型のウェアラブル光源として,常時装着・連続計測を行なうデバイス応用に向けて注目されている。しかし,これまでの超薄型の有機EL素子は十分な大気駆動安定性を持っていなかったため,皮膚貼り付け型の連続駆動可能な光脈波センサーはこれまでなかった。
研究グループは,大気安定な電子注入層と透明電極を組み合わせた逆型構造を用いることで,大気駆動安定な超薄型有機ELの開発を行なった。逆型構造を持つ有機ELは,酸化物や高分子材料を陰極として用いることで,従来の順型構造と比較し,高い大気安定性を実現することができる。この大気安定な逆型構造を超薄型の有機ELに導入することで,大気駆動安定な超薄型有機ELを実現した。
開発した逆型構造有機ELは,超薄型基板上へ作製した際も11.7時間の連続駆動後において初期の70%の輝度を保持可能な,高い大気駆動安定性を持つことを確認した。この値は,これまで実現されてきた超薄型有機ELの約3倍の値となるという。
次に,開発した超薄型有機ELを,超薄型の有機フォトディテクタ,有機太陽電池と集積化することで,太陽電池のエナジーハーベストによって駆動する,「皮膚貼り付け型光脈波センサー」を作製した。全ての素子が超薄型かつ柔軟であるため,作製した光脈波センサーは,長時間の皮膚貼り付けにおいても装着感が少ない貼り付けが可能。
さらに,太陽光を用いて発電を行ない自立駆動するため,外部の電源との接続・給電の必要がない。実際に人体の皮膚に貼り付けた際には,太陽電池の電力によって光脈波センサーが駆動し,脈波計測に成功した。
開発した光脈波センサーは,常時装着・連続計測に向けたウェアラブル医療デバイスとして期待できる。例えば,日常生活における医療ケア,急激な体調悪化の対策など,従来の医療システムと相補的な医療ケアデバイスとしての応用が考えられるとしている。