環境,エネルギー分野の材料・技術を研究開発するGSアライアンスは,同社で合成しているグラフェン系量子ドット,炭素系量子ドットを元にシリカ複合材料を作り,440-470nmの青色を発光するLEDの上にこの材料を担持することにより,白色LEDが作れることを明らかにした(ニュースリリース)。
人工的に白色光を得るためには,三原色すべてを含む幅広い発光スペクトルをもつか,または三原色に対応する複数のLEDを組み合わせることが必要となる。
しかしながら,現在の大多数の白色LEDにおいては,三色を用いることはコストの観点からもあまりなく,窒化ガリウム(GaN)などの青色LEDと,補色の黄色蛍光体の組み合わせが最も多く用いられている。既存の白色LED用蛍光体や黄色蛍光体の代表的なものとしてYAG系と呼ばれる(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce3+や(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Eu2+が挙げられる。また最近は窒化物,酸窒化物及び硫化物などの蛍光体もある。
一方でこれらの半導体系の蛍光体は,その材料組成に依存した一定の決まった波長しか発光せず,発光波長の微調整が難しいという課題もある。この点量子ドットは,可視スペクトルのほとんどすべての色に光を変換することができる。量子ドットの合成時において組成の違い,量子ドットサイズの違いをつけて,発光色を調整することができることが最大の利点となるという。
また現行使用されているYAG系材料などの蛍光体材料はミクロンサイズなので,光散乱が課題でもあるが,量子ドットは10nm以下のナノ超微粒子であるので可視光領域での透明度が高く光散乱が少ないので入射光,発光ともに効率良く取り出せることができ,GaNなどの青色LEDからの励起光を効率良く波長変換できる。
つまりGaNに対する同じ消費電力で既存のLEDより,明るくなる可能性があるという。また発光部分と青色発光源であるGaNの距離が離れている構造なので,GaNの温度が上がりにくいためダメージを受けにくく,LEDが長寿命化できる可能性もある。
さらに現在最も使用されている黄色蛍光体であるYAG系蛍光体はコストが高いという課題がある。今回開発したグラフェン量子ドットLEDの原料である炭素系量子ドット,グラフェン量子ドットは比較的コストメリットのある有機物を原料としており,大量生産時には既存の白色LEDより安価に生産できる可能性があるという。
同社は今後,これらの材料のサンプルワーク,事業化などを国内外に展開していく予定だとしている。