東京都立産業技術研究センター(都産技研)と東京工業大学は,類似の従来材料と比べて優れた発光および電気化学特性を示す新規機能性含ホウ素有機材料を開発した(ニュースリリース)。
3配位ホウ素原子を含む有機化合物は近年,有機半導体材料や発光材料への応用が期待されている。
機能性有機材料のビルディングブロックである平面状炭素骨格に3配位ホウ素原子を簡便に組み込む手法としては,ジメシチルボリル基など空気や水に安定な嵩高いホウ素置換基を利用することが挙げられる。
しかし,嵩高いホウ素置換基はナフタレンやアントラセンといった大きな平面状炭素骨格へ導入すると互いの立体反発から分子構造の捻じれを生じ,炭素骨格にホウ素原子の性質を上手く組み込めなくなる問題があった。
研究ではエチンジイル骨格と呼ばれる架橋構造をホウ素置換基と炭素骨格の間に挟むことで捻じれを抑制し,効率的に3配位ホウ素原子を平面状炭素骨格へ組み込むことに成功した。開発したナフタレン誘導体(1N,2N)およびアントラセン誘導体(1A,2A)は既知の前駆体から1ステップで合成できるという。これらの化合物は空気に比較的安定であり,アントラセン誘導体に至っては大気中,溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけることもできる。
ナフタレンおよびアントラセン誘導体は可視光領域の光を強く吸収し,ナフタレン誘導体は固体,アントラセン誘導体は固体と溶液の双方で強い蛍光性を示す。また,従来の含ホウ素有機化合物と比較して本分子群は電子受容性の大きな深いLUMO準位(-2.7~-3.3eV)を有しており,有機半導体としての応用が見込まれるという。
今回新たに確立した分子設計はエチンジイル架橋を導入可能なさまざまな平面状炭素骨格へ拡張することが可能であり,今後さらなる機能性含ホウ素有機材料の開発に繋がることが期待されるとしている。