原研ら,重元素化合物中の電子集団の振舞いを計算

日本原子力研究開発機構(原研)と米マサチューセッツ工科大学は,重元素化合物など多数の電子が強く影響しあって運動する物質の振舞いを解析可能とする,従来とは異なる理論を考案した(ニュースリリース)。

物質の性質の多くは,物質中の電子の振る舞いによって説明される。電子はミクロの世界を支配する量子力学の法則に従って運動しており,その動きを量子力学により計算することで,電気抵抗が突然ゼロとなる「超伝導」のような現象を理論的に予言することが可能となる。

しかし,これらの物質の超伝導は超低温で発現するため,更なる有用な物質の探索が行なわれている。高温超伝導体は,従来の超伝導体より100度以上も高い温度で超伝導が発現するが,電子同士の相互作用が強く,互いに強く影響を及ぼしながら運動するため,従来の計算方法では現象を再現することができない。このような互いに強く影響を及ぼしあう電子集団を有する物質は高温超伝導体だけでなく,ウラン等の重元素を含む重元素化合物も該当する。

従来,物質の性質を解析するため電子集団を理論的に取り扱う際,電子を一つだけ取り上げ,他の電子からの影響を背景として取り込むという計算手法が用いられてきたが,強く影響を及ぼし合う電子集団が示す現象は再現できないことが知られている。したがって,もし,強く影響を及ぼしあう電子集団を理論的に解析することが可能になれば,高温超伝導のような優れた性質を示す未知の物質探索が可能になると考えられる。

研究では,互いに強く影響を及ぼしあう電子集団が特異な性質を示す重元素化合物の電子の振舞いに注目し,他の電子の影響を強く受けながら運動する電子を表現する方法を探索した。

従来,他の電子を背景とみなして解析する場合,従来の量子力学概念を用いてきたが,研究グループは,重元素化合物の電子が比較的自由に動ける電子と他の電子の影響を強く受ける電子の二つの側面を持つという特徴に注目することで,従来の発想を大きく転換し,従来とは異なる量子力学原理を用いることで,より的確にその運動を捉えられることを世界で初めて発見した。

発見した理論を用いて計算した結果,重元素化合物では見つかっていない特異な現象(「フェルミアーク」と呼ばれる量子現象)を理論的に予言することが可能となった。この成果に基づき,予言する現象が実際に観測されれば,物質の基本的性質を理解するための大きな手掛かりになるとしている。

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