東工大ら,高周波信号の量子化分配器を実現

東京工業大学と日本電信電話(NTT)は,量子ホール効果を用いた一次元プラズモン回路において,高周波信号を正確な整数比で分配することができる量子化分配器を実現した(ニュースリリース)。

入力信号を複数の出力に分ける分配器は,高周波回路で必須の基本回路ながら,正確な分配器を実現することは難しい。今回,研究グループは,量子ホール効果を用いた一次元プラズモン回路において,高周波信号を正確な整数比で分配することができる量子化分配器を実現した。

入力信号を正確に1:1で分配する素子と,入力信号を正確に2:1で分配する素子の場合,入力に波束状の電圧パルス(電荷量q)を入射すると,一次元プラズモン回路を電荷の波束が伝搬し,Y字型の分岐路において電荷量の比が正確に1:1または2:1に分配され,それらの信号が2つの出力に現れる。

これらの整数分配比は,量子ホール効果におけるランダウ占有率によって決まる。Y字分岐を構成する周囲の3つの領域におけるランダウ占有率によって,電荷を正確に1:1で分ける1:1量子化分配器や,電荷を正確に2:1で分ける2:1量子化分配器を構成することができ,この分配比はランダウ占有率を選ぶことで切り替ることができる。

これは,整数・分数量子ホール効果における電荷の分数化現象と呼ばれ,その分配比を整数比に量子化し,分配することができる量子化分配器の動作(電荷の分数化現象)を実験で検証した。

用いた素子は,GaAs(ガリウム砒素)とAlGaAs(アルミニウムガリウム砒素)の半導体ヘテロ構造を微細加工したもので,半導体ヘテロ構造をエッチング加工し,オーミック電極とゲート電極を形成した。磁場やゲート電極に印加する電圧を調整することで,分配比率(1:1,2:1など)を切り替える。素子はパッケージに収められ,極低温強磁場中にて動作を検証した。

今回実現した量子化分配器は,切り替え可能な整数比で電荷を分配することができるため,高速で正確な信号伝達が要求される回路に活用することができる。この手法を発展させることで,半導体をベースとした量子コンピューターの制御手法に関する研究に繋げるという。

正確な整数比での信号分配という量子機能性は,量子ホール効果をもたらす電子状態が特殊なトポロジカル状態にあることに起因するもの。今回見出した現象は,電荷分数化現象(charge fractionalization)と呼ばれ,物性物理学における興味深い現象であり,非自明な準粒子の機能性をもたらすトポロジカル量子技術への発展が期待されるとしている。

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