国立環境研究所は,建物の屋根上PVとEVを蓄電池として組み合わせることにより,今後,都市の脱炭素化を効率的に行なえることを明らかにした(ニュースリリース)。
日本では,都市からのCO2排出は全体の50%を超える。つまり都市におけるCO2排出を減らすことがネットゼロ排出社会に向けて非常に重要となる。
都市の脱炭素化では電化が経済性の高い方法であると言われているが,自動車も同様で,ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトが有効とあなる。しかし,発電が石炭や天然ガスなど化石燃料を使って行なわれれば,その脱炭素化効果も減少してしまう。
そこで,屋根上太陽光発電(PV)とEVの充電を組み合わせればCO2排出がゼロの電気でEVを充電できる。またその建物でEVをPVの蓄電池として使うことで,CO2排出ゼロのPVからの電気をEVの駆動のみならず建物内の電気製品にも使用することができ,大幅なCO2排出の削減に繋がる。
研究では,日本の9つの都市(東京都区部,札幌市,仙台市,郡山市,新潟市,川崎市,京都市,岡山市,広島市)において,屋根面積の70%にPVを敷設し,市内の乗用車をEVに変え,都市では特に稼働率の低い車(EV)を蓄電池(40kWhの50%の容量)として用いることで,都市の53-95%の電力需要を賄うことができることを明らかにした。また,車と電力消費からのCO2排出の54-95%の削減につながるという。
2030年には,このシステムの導入により,エネルギーコスト(ガソリンと電気代)が26-41%削減となる可能性があるとする。この結果は,今後ネットゼロCO2排出の社会を作っていく上で,自然侵略性の低い屋根上PVとEVのシステム(SolarEV City)を,最大限活用することが重要であることを示すもの。
このようなシステムを実現するためには,PVとEVを組み合わせたシステムの普及を進めるのと共に,コミュニティーでのPV電力の自家消費を最大化させる分散型電源システムを発展させていく必要があり,それを可能とする様々な規制改革を行なう必要があるという。
また,個人・コミュニティーの選択・活動が重要となるため,行政,コミュニティー,NGO,企業,研究者らが協力しながら,SolarEV Cityを実現していく必要があるとしている。