東大,紫外線を利用したアゲハ蝶の擬態術を解明

東京大学は,シロオビアゲハのメスが,紫外線(UV)を利用して毒蝶に巧みに擬態する分子機構を発見した(ニュースリリース)。

沖縄などに生息するシロオビアゲハには,翅の紋様を毒蝶のベニモンアゲハに似せた擬態型と,オスと似た紋様を示す非擬態型の2種類のメスがいる。擬態型メスと非擬態型メスの翅の中央部には白い斑紋があるが,前者は毒蝶と同じようにUVを反射するのに対して,後者はUVを吸収して青く光る。

擬態型メスで擬態を制御する遺伝子dsxの働きを抑制すると,UVを反射せずUVを吸収して青く光るようになった。鳥などの捕食者はUVを見ることができることから,dsxはUVへの応答性を毒蝶に似せるように切替えていると考えられるという。

また,dsxはUV応答に関わる物質の合成だけでなく,微細な鱗粉構造も制御していることがわかった。ベニモンアゲハ後部の白色も擬態型メスの白色と同様にUVを反射し,その鱗粉も隙間の多い骨格構造が観察された。隙間の多い骨格構造の鱗粉ではUVは反射され,UV光で励起されて青い蛍光を発する色素で充填された鱗粉だと,UVは吸収されて蛍光を発すると考えられるという。

これらの結果は,UVの吸収や反射に関して新たな物質や構造を創出するような応用に結びつく可能性がある一方,UVが擬態のような種間コミュニケーションや性戦略といった種内コミュニケーションに大きな役割を果たしており,UVに対する応答性が遺伝的に制御され進化してきたことを明らかにするものだとしている。

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