大阪大学は,世界最薄・最透明な電位センサシートを開発することに成功した(ニューリリース)。
従来,透明電極(透明配線と同意)は,ディスプレーや太陽電池などの光電子デバイスにおいて重要な役割を果たしており,酸化インジウムズズ(ITO)などの材料で作製されていた。
従来のこうしたセンサーは,金属や半導体などを硬い素材を用いて集積化されており,生体へ接触して計測する際には,生体組織の炎症や損傷を引き起こすリスクが高いと認識されていた。そこで,フレキシブル有機エレクトロニクスの研究開発が活発にされているが,不透明であるものが多かった。
研究グループは今回,柔軟性や透明性に富む銀ナノワイヤ材料を用いて,配線特性を損ねることなく微細化できるプロセス技術を構築した。銀ナノワイヤを用いた透明電極は,金属的な性質から導電性に優れており,さらに柔軟性を発現できるなど,高性能化が容易な材料系であると認識されつつある。
これまで,銀ナノワイヤ電極は,スピンコート,ドロップキャスト,スプレーコートなど湿式プロセスを利用して形成されていた。しかし,電極中において,銀ナノワイヤのメッシュ構造がランダムとなりやすく,不均一な電気伝導パスを形成していた。その結果,電極パターンを微細化する際に,メッシュ構造の伝導パスが途切れる課題が発生していた。つまり,透明性,導電性,柔軟性,微細パターンを同時に達成することは,これまで実現されていなかった。
今回,湿式プロセスである親水撥水パターニングにより銀ナノワイヤ電極の微細化技術を開発し,これら4つの要素を同時に達成する透明電極を実現した。銀ナノワイヤ配線は,十字配向を利用する構造を適用した場合,最小20μm幅(単一細胞と同等のサイズ)のパターンサイズを実現したという。
銀ナノワイヤ電極の特性は,例えば25μm幅において,25Ω/sqのシート抵抗,および96%の高い可視透過率を示した。これら特性は,大面積な銀ナノワイヤ透明電極と同等の特性であり,開発した微細化手法の有用性を示唆するものだとする。
研究グループは,開発した透明電極を用いて,極薄膜で可視透過率の高いセンサシートを2つ実現した。第一に,単一細胞から電気生理信号を検出するためのセンサシート。第二に,ソース,ドレイン,ゲートへ電極として利用した有機トランジスタの回路を搭載したセンサシート。これらのセンサは曲げ耐久性にも優れていることを実証した。
この成果により,あらゆる対象物において,ユーザビリティを高めたセンサシステムとして広い展開を期待できるとしている。