島津製作所は,微量元素および各種化合物それぞれの分布情報を取得し,複合的に解析可能な「マルチモーダルイメージングシステム」の販売を開始した(ニュースリリース)。
このシステムは,元素の分布情報取得が可能なレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS),化合物の分布情報取得が可能なイメージング質量顕微鏡,両装置で取得したデータを統合的に解析できる質量分析イメージ解析ソフトウェア「IMAGEREVEAL MS」で構成されており,生体内での金属の機能や代謝機構に関する,より正確な情報を取得できるという。
レーザーアブレーション(LA)は固体試料の微小領域にレーザー光を照射することで,その部分を蒸発・粒子化する技術。誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)は試料に含まれる元素の種類と含有量を測定する。
両者を組み合わせたLA-ICP-MSでは,生体試料や鉱石,半導体,金属など固体試料に含まれる微量な元素の分布を調べることが可能だという。またイメージング質量顕微鏡は,光学顕微鏡とMALDI型質量分析計を組み合わせた装置であり,生体試料に含まれる薬効成分など各種化合物の分布を可視化するとしている。
イメージング質量顕微鏡では有機化合物の分布情報が取得できるのに対して,LA-ICP-MSでは金属など微量元素の分布情報を得られるとともに定量性に優れているため,相補的な技術を合わせることで,より多くの情報による高度なイメージング解析が可能となるという。
また,イメージング質量顕微鏡とLA-ICP-MSの測定試料はいずれも大気圧下の試料室にセットされるため,水分を含む生体試料でも容易に測定可能。数μm~数十μmの空間分解能を持ち,微小領域における対象成分の分布評価に適しているという。
さらに,統合解析ソフトウェア「IMAGEREVEAL MS」は,簡単な手順で時間や手間をかけずにイメージング質量顕微鏡とLA-ICP-MSのイメージングデータを多様な観点から解析可能。両者のデータを特別な変換無しで取り込み,すぐに解析できるとしている。