北海道大学大学とリガクは,イオン液体中の二酸化炭素の様子を柔らかい結晶を使って可視化することに成功した(ニュースリリース)。
大気中の二酸化炭素濃度は年々上昇しており,これが地球温暖化の主要因として問題視されている。更なる温度上昇を防ぐためには,二酸化炭素を生成しない産業社会への転換を試みるとともに,排出される二酸化炭素を大気中に放出される前に分離回収する必要がある。
既に二酸化炭素の分離回収は行なわれているが,環境問題・資源問題の観点からより高効率に二酸化炭素を分離回収できる技術の開発が急務となっている。
イオン液体を用いた吸収法は,二酸化炭素分離法の一つとして精力的に研究されてきた。吸収された二酸化炭素がイオン液体中でどのような状態をとっているかを調べることは材料を改良する上で非常に重要だが,イオン液体が規則正しい構造をもたない“液体”であるため,吸収された二酸化炭素の状態を直接観測することはこれまで困難だった。
研究では,液体の柔らかさと結晶の規則性の両性質をもつ柔らかい結晶に着目し,イオン液体の成分を柔らかい結晶に組み込んだ。合成された柔らかい結晶は,液体のように構造を変えながら二酸化炭素を選択的に吸収した。
期待したとおりに二酸化炭素吸収後も規則性を保ち,二酸化炭素を吸収させた状態でX線構造解析に成功した。その結果,吸収された二酸化炭素はイオン液体のアニオン成分であるビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンの酸素及びフッ素原子と相互作用していることがわかった。
さらに,実験科学のみならず計算科学を用いることにより静電力と分散力が二酸化炭素とアニオン間を結びつける力として働いていることを明らかにした。
地球温暖化は地球上の全生物が関わる重要な問題であり,それを解決するためには高効率な二酸化炭素分離回収技術の開発が不可欠。研究グループは,この研究成果を基に,より高性能なイオン液体を設計・開発することができれば,実用化へ向けた検討が加速されることが期待されるとしている。