電子ビーム(eBeam)技術の業界団体であるイービーム イニシャチブ(eBeam Initiative)は業界の識者の認識に関する年次調査を終え,第6回目となる,内製及び外販マスクメーカー10社の製造動向調査の纏めを終了した(ニュースリリース)。
調査の結果,2020年のマスク市場規模は,新型コロナウイルス感染症の流行にも関わらず,2019年同等かあるいは増加するであろうと,89%の識者が見ている事が明らかになった。更に,66%が,EUV露光がフォトマスク市場の伸びを牽引するとの見方をする一方,回答者のほぼ全員が,EUV露光がマルチビームマスク描画機導入を後押しする形で,今後3年間はマルチビームマスク描画機の市場が伸びると予測した。
曲線図形よりなるマスクの製造はマルチビームマスク描画機で可能となるので,回答者の殆どが,2023年までには曲線図形よりなる最先端マスクが大量生産(HVM)ラインで使用されるようになると予想した。
マスクメーカー調査の結果でも,マルチビームマスク描画機で描画されるマスクの枚数が昨年の調査結果に比べ2倍以上となっており,一方マルチビームマスク描画機での平均描画時間は12.14時間だった。さらに,EUVマスクの製造歩留まりは91%となった。
マスクプロセス補正(MPC)技術が使用される割合は最先端の設計ルール製品で伸びているという(16nm以下の設計ルールの製品では3倍近い伸びを示した)。
マスクメーカー調査結果からの他の主要点は以下の通り(データは2019年7月~2020年6月までのもの)
• 全マスク(EUV,交互位相シフト,減衰位相シフト,二値のマスクを含む)の製造歩留まりは94.2%であった。
• EUV マスク製造に使用されたレジストに必要な感光量は193i用のマスク製造に使用されたレジストの感光量よりも高かった(中央値は 61.3μC/cm2対43μC/cm2)。
• 11nmから16nmまでの設計ルールに対応するマスクのTATの平均は9.73日で32nmから45nmの設計ルールのマスクのTATの2倍以上だった。
その他主要点(調査は2020年7月実施)
• 回答者の74%が2023年までに,EUVによる半導体量産工程では露光波長を用いたマスク検査が用いられるとの見通しに同意,一方48%の回答者が,マスク製造部門ではマルチ電子ビーム検査技術が使用されるとの見通しに同意した。
• 調査回答者の84%が逆変換露光技術(Inverse Lithography Technology: ILT)が半導体量産工程で既に使用されていると確信している。
• 回答者の94%が2023年までには193i露光用のマスクに曲線パターンを有するマスクが何がしか量産用に使用されると予想し,一方85%の回答者が 2023年までにはEUV露光用のマスクに曲線パターンを有するマスクが使用されると予想している。
• 回答者の62%が2022年までに深層学習(Deep Learning)がマスク製造の幾つかの工程で競争優位を決定付ける要素となると予想している。