NECは,リモートセンシング技術の一つであるLight Detection And Ranging(LiDAR)を活用した異常検知分析エンジンを開発した(ニュースリリース)。
わが国では,人手不足が深刻化し,あらゆる産業で先端技術を活用した業務の変革が求められている。そうした中,LiDARを活用することで,外観データから異常を検出することができ,人手による工数を削減する技術として,設備点検業務をはじめとする様々なシーンでの応用が期待されている。
このLiDARの技術を元に開発した異常検知分析エンジンは,LiDARで対象物の形状・輝度を読み取ったデータに基づき,周辺と異なる輝度,過去データと異なる形状・輝度を分析し,対象物の異常を検知するというもの。
LiDARを活用した異常検知の特長は,異常値に関するデータの学習・蓄積がなくても,検知が可能な点にあるため,不具合が発生することが稀で異常値のデータを予め収集することが困難な設備での巡視点検を代替する手段として,特に活用が期待されているという。
同社は2019年8月より,福島県南相馬市の東北電力ネットワーク総合研修センターにおいて,研修用変電設備の異常検知に係る技術検証を実施した。営巣,漏油,がいし破損などの異常を模擬した環境を用意し,検証したところ,LiDARから20m以内に設置した模擬異常のすべて(営巣3か所,リード線外れ2か所,がいし破損1か所,漏油5か所)を検知することができた。
このエンジンは対象物の外観データを可視化することで,異常を検知するものであり,変電設備など異常値に関するデータ学習が困難な設備での活用が期待されている。同社は東北電力ネットワークとともに,技術検証を実施し,東北電力ネットワーク宮城管内の変電所において,このエンジンを用いた巡視点検システムのフィールド検証を本年10月から実施する。その後LiDARを活用した異常検知分析エンジンの改良を進め,2020年度中の製品販売開始を目指すとしている。