山梨大ら,高増幅・低オン抵抗トランジスタを開発

山梨大学と新日本無線は,コレクタ領域をスーパージャンクション(SJ)構造とするシリコンバイポーラトランジスタ(SJ-BJT)の開発に成功した(ニューリリース)。

パワー半導体デバイスを用いた電流開閉装置(ソリッドステートリレー,SSR)は,家電製品,産業機器など広範囲に活用されている。今後,SSRの小型・省エネ化を推進するためにはパワー半導体の低損失化,特にオン状態での抵抗(以下オン抵抗)を低減することが必須となる。

現在,SSRに主として使用されているサイリスタ,トライアック,MOS電界効果型トランジスタ(以下MOSFET)などのパワー半導体デバイスは近年性能の限界に近づきつつあり,新しい概念の低損失パワー半導体デバイスの開発が必要とされていた。

従来のスーパージャンクションMOSFET (SJ-MOSFET)に用いられているスーパージャンクション技術を応用することで,世界で初めてSJ-BJTを作製し,高耐圧を保持しつつ,低オン抵抗と電流増幅率向上を実現した。

スーパージャンクション技術はn型半導体領域とp型半導体領域を交互に周期的に配置した構造であり,パワー半導体の高い耐圧と低いオン抵抗を両立することが可能な構造。この技術はこれまで主としてSJ-MOSFETに用いられており,それによりSJ-MOSFETのオン抵抗の低減が実現された。

今回,この技術をシリコンバイポーラトランジスタに適用し,スーパージャンクション構造とホールの注入効果を組み合わせることで,高耐圧であると同時に,低オン抵抗,高電流増幅率動作を実現した。

SJ-BJTの動作において,従来のスーパージャンクション構造の動作だけでなく,オン状態でベース電極からスーパージャンクションのp型領域を介してスーパージャンクションのn型領域へホールが効率的に注入されることが特徴。この効果により電子電流が促進される伝導率変調現象が起こり,オン抵抗を低減できるとともに電流増幅率を増加することが可能となるという。

また従来のIGBT,サイリスタ,トライアックは,コレクタ側(もしくはアノード側)のp型領域よりホールを注入する構造であるため,素子をオンさせるのに,少なくとも0.7V以上のオン電圧が必要だったが,SJ-BJTはベース電極よりホールを注入するために,低コレクタ電圧から導通し,原理的にオン抵抗を低くすることが可能だとしている。

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