産業技術総合研究所(産総研)は島津製作所らと共同で,10nm~40µmの広いサイズ範囲の粒子を分級できる遠心流動場分離装置を構築した(ニュースリリース)。
近年,数nm単位で制御された半導体デバイスパターニング技術の実用化や,サイズの小ささゆえのポテンシャルリスクの懸念によるナノ材料規制など,サイズという特性に注目した実用化や規制が進展している。流動場分離法は広いサイズ範囲の粒子を分級できることから,近年欧州では規制に対する評価に利用できる技術として注目を集めている。
遠心流動場分離装置の遠心力の上限は装置の耐圧性能によって制限されるが,従来の装置では複数の金属や樹脂などからなるサンドイッチ構造の精密流路と,精密流路回転軸の軸シールによって耐圧性能が確保されている。
しかし,精密流路については流路自体の耐圧性能,軸シールについては回転により生じる摩耗への耐性が課題であって,高速回転時の液漏れにつながっていた。
今回構築した遠心流動場分離装置は,これらの課題を解決するため精密流路には一体成型分離流路を採用して耐圧性能を確保し,さらに,軸シールの耐摩耗性能を向上させた。この結果,15900Gもの高遠心加速度発生時でも液漏れを起こさず材料のサイズ分級を行なえるとする。
これにより,現行の欧州製遠心流動場分離装置では不可能であった高い分離分解能を実現した。30nmのシリカ粒子でも良好な分離が可能で,粒子の密度に分離能は依存するものの,10nm~40µmまでのサイズ分離が可能だという。さらに,改良前の装置と比較して銀ナノ粒子の分級時間を半分に削減できた。
研究グループは,今回構築した装置やそれに用いられた技術により,サイズ分布を精密に評価された先端材料開発や,目的とするサイズの粒子だけの分取によって高精度にサイズを制御された新しい材料の開発の促進が期待されるとしている。