日本電信電話(NTT)は,増幅器の周波数を制限する要因となっていたトランジスタの寄生容量成分をインダクタ成分で中和する中和回路を500GHz帯で初めて増幅回路に適用し,500GHz帯での20dBの高利得増幅器ICの実現に成功した(ニュースリリース)。
500GHz帯を含むテラヘルツ波は,他のシステムや他の自然放射波との干渉が少ない周波数帯域であり,水蒸気や酸素の濃度を正確に把握可能な電気的特性を有しているため,既存の気象観測の利用周波数(7GHz-80GHz)に加えて観測に利用することにより,台風や集中豪雨などの気象予報精度の向上が期待されている。
同社は今回,独自の中和回路技術を適用した500GHz帯増器ICをInP-HEMTで実現し,高利得の増幅器ICの実現に成功した。従来,増幅器の動作周波数は,トランジスタの性能(fMAX)の6割程度の周波数に留まっていた。
これに対し,増幅器の周波数を制限する要因となっていたトランジスタの寄生容量成分をインダクタ成分で中和する中和回路を提案した。この回路技術をテラヘルツ波に適用した増幅器ICを試作し,fMAXの8割を超える500GHz帯において利得20dBの増幅動作に成功した。
これは,これまでに報告されている500GHz帯増幅器ICの2.5倍の利得であり,台風や集中豪雨などの気象予報精度の向上につながる技術として期待されるほか,センシングだけでなく,イメージングや大容量無線通信等様々な分野での活用も期待されるとしている。