東大,超安定な極小銀ナノクラスターを開発


東京大学の研究グループは,わずか7個の銀原子から構成される安定な銀ナノクラスターの開発に成功した(ニュースリリース)。

数個~数百個程度の銀原子が集合して生成する銀ナノクラスターは,金属としての銀や単一の銀イオンでは実現できない特異な触媒特性や物性を示す。大きさや形によって多彩な性質を示すため,その構造を制御することにより新しい機能材料の開発が期待されている。

特に,担体となる金属酸化物と複合化することにより,銀ナノクラスターと金属酸化物の協奏的・相補的な機能の実現が期待できる。しかし,微小な銀ナノクラスターは非常に不安定でなことが課題であり,安定に保持する手法が求められていた。

分子状タングステン酸化物は,その性質から触媒として重要な材料の1つとされている。特に,安定構造から一部が欠損した欠損型分子状タングステン酸化物は,様々な金属イオンと反応し,導入した金属種を安定化することができるため,さらに高活性・高選択的な触媒や,光機能材料などへの応用が期待されている。

研究では,世界で初めて,筒状の分子状タングステン酸化物の内部空間を利用して,わずか7個の銀原子から構成される「超安定な極小サイズの銀ナノクラスター」の製造法を発見した。この銀ナノクラスターは銀原子が表面に露出しているにもかかわらず,固体状態だけでなく溶液中に溶解した状態においても,非常に高い安定性を示す。

単結晶X線構造解析により,3個の欠損型分子状タングステン酸化物と銀イオンが反応することで,筒状タングステン酸化物が生成し,その内部に7個の銀原子から構成される銀ナノクラスターが生成したことが明らかになった。これらはいずれも世界で初めて見いだされた構造だという。

また,この銀ナノクラスターは,銀原子が材料表面に露出していることが分かった。保護されていない銀原子は触媒反応などへの応用に重要だが,同時に銀クラスターの分解や構造変化の原因になる。しかし,この銀ナノクラスターの構造は1週間以上変化せず,非常に優れた安定性を持つことが見いだされた。

これは,既存の銀ナノクラスターが溶液中では数日程度で分解してしまうことと比較しても,特筆すべき性質だという。また,光に応答して銀ナノクラスターからタングステン酸化物への電子移動が起こることも見いだされた。

これらの材料は,光機能材料,抗菌・抗ウイルス剤,センサーなどへの応用が期待される。さらに,この合成手法を応用し,新規材料を設計できるようになるとしている。

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