名大,あらゆる色となるシリカ微粒子顔料を開発

名古屋大学の研究グループは,安全な素材である非結晶性シリカのみを用いて調製した三色の顔料を組み合わせることで,あらゆる色を発色可能になることを見いだした(ニュースリリース)。

環境に配慮したものづくりの変化に伴って,我々の生活を彩り鮮やかで豊かにしてくれる色材においても,人の健康と環境に有害になると懸念されるものは,安全な材料から成る代替品への転換が緊急課題となっている。

一般的な染料や顔料は,可視光の一部もしくは大部分を吸収し,残りの波長の光を散乱や透過することによって発色する。例えば,有機化合物からなる色素は,二重結合が一つおきに連なった共役系を有し,この共役系の大きさによって,吸収する光の波長が変わる。水酸基やニトロ基などの官能基も共役系に影響を与えるため,有機化合物の分子構造と色には密接な関係がある。

無機化合物の色は,遷移金属イオンのd軌道が関与する光の吸収などを起源としている。つまり,従来の染料や顔料の色は,物質を構成する原子やイオンの電子配置,分子や結晶を構成する化学結合によって決まる。

可視光の吸収を伴うことなく発色するものも存在する。例えばレイリー散乱は,可視光の波長の長さよりも小さな微粒子を分散した懸濁液などから青い色が生じる。また,構造色は光の波長サイズの微細な秩序構造の存在によって,特定の波長の光が選択的に干渉して強められ,鮮やかな色を示す。

研究では,粒径の揃った球状のシリカ微粒子を球状のコロイド結晶(フォトニック顔料)にした。すると,構成するシリカ微粒子のサイズに応じて鮮やかな構造色を示すようになる。粒径が,221nm,249nm,291nmのシリカ微粒子を用いた場合,これらからなるフォトニック顔料は,それぞれ,青,緑,赤色を示すという。

従来の色材は,シアン,マゼンダ,イエローの三色を基本とし,これらの組み合わせによってあらゆる色を再現する。一方,このフォトニック顔料は,色の三原色による発色ではなく,光の三原色を利用することになる。すなわち,RGB(赤,緑,青)の組み合わせとなる。今回調製したフォトニック顔料を混合することで,原理的にはあらゆる色を表現できるようになる。

今回の研究で用いた素材は,これまでに化粧品,食品添加物などにも利用されており,安全なものであるため,これらから鮮やかで様々な色を示す材料を構築する原理を開発したことは,我々の未来の生活に役に立つ技術になるとしている。

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