東大ら,レーザー中の散逸量子系を記述

東京大学と茨城大学の研究グループは,レーザーなど周期性をもった外場を照射された散逸量子系の非平衡定常状態を記述する一般公式を発見した(ニュースリリース)。

物質にレーザーを照射することでその状態を変化させ,物質の望ましい性質や機能(電気伝導性・磁性など)を人工的に作り出す研究が行なわれている。特に,レーザー電磁場の時間的な周期振動を利用した物質制御は,フロケ・エンジニアリングと呼ばれている。

しかし,レーザーの様な周期外場でどのような物質制御が可能かを判別する一般理論は,これまで散逸のない理想的な孤立系に限られていた。しかし,身の回りのほぼ全ての物質は散逸の効果は避けられず,これらの通常の物質を含んだ広範な物理系に適用できる周期駆動系の一般理論は未発達だった。

一方,周期駆動された個別の散逸系においては理論解析が行なわれてきたものの,高度な計算を必要とし,幅広い対象に適用可能な公式は得られていなかった。

今回,研究グループは,リンドブラッド方程式と呼ばれる広い散逸量子系のダイナミクスを記述する方程式を出発点として,一般的な周期外場中の散逸系の包括的な解析を行なった。散逸のない系で用いられる高周波展開という理論手法をリンドブラッド方程式へ拡張して適用することで,非平衡定常状態を記述する一般的な公式を発見した。

この公式は,レーザー周波数が高い状況において非常に良い精度で非平衡定常状態を記述する。これまでの散逸を含まない理論ではしばしばフロケ・エンジニアされる物理量の値が過大評価されていたが,今回の公式を応用することで,散逸の効果を取り込んだ物理量の現実的評価が可能となる。また,この公式を用いた状態の計算は非常に簡単で,コンピュータ・シミュレーションに比べて高い実用性があるという。

研究グループはダイヤモンドのNV中心のモデルにおいて,この公式が非平衡定常状態の時間平均・ゆらぎ、及び対称性を正しく再現することを検証した。その中で,特に散逸のない系では時間反転対称性により禁止される物理量が散逸の効果によって発現する様子も正しく再現することを明らかにした。このことは,散逸系に固有のフロケ・エンジニアリングの可能性を示すという。

この成果は,散逸の避けられない実際の物質の性質をレーザーなどで制御するフロケ・エンジニアリングの指針を確立するための第一歩だとする。研究グループは,今回の公式をより微視的なレベルへ深化させる基礎科学研究や,新しいフロケ・エンジニアリングの提案などの応用研究を進めていくとしている。

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