東京工科大,がん幹細胞を見分けるAI開発

東京工科大学の研究グループは,がん幹細胞と非がん幹細胞を識別する人工知能(AI)技術を開発した(ニュースリリース)。

腫瘍はがん幹細胞と呼ばれる非常に少数の細胞群によって維持されており,これを標的とした治療法が注目されている。その研究ツールとして各種がん幹細胞の培養細胞の利用が始まっている。

幹細胞が特徴的な細胞形態を呈することは,一部の研究者らの間では知見があるが,幹細胞性を簡単に評価する方法はなかった。一方,近年のAIによる画像生成技術「Conditional Generative Adversarial Networks」(CGAN)では,対応する2つの画像をマッピングすることで,学習済みAIが元画像を変換し実画像に近い画像を生成することができる。研究では,このCGANを応用し,がん幹細胞を識別して画像を生成するAIの作製を検討した。

位相差画像を用いて細胞・組織を撮影し,その画像に含まれるがん幹細胞の形態をAIで深層学習した。がん幹細胞の教師用画像には,幹細胞の性質を維持した細胞だけが蛍光を発するNanog-GFPレポーターの蛍光画像を使用した。

その結果,培養皿で培養したがん幹細胞を深層学習したAIは,実画像と比較して類似性と感度が平均して約40%,特異度が97%の精度で,位相差画像に含まれるがん幹細胞を識別し,その画像を生成した。

腫瘍組織のがん幹細胞を深層学習したAIは,培養皿のがん幹細胞の学習よりは精度が劣った。しかし,腫瘍組織に存在するがん幹細胞と非がん幹細胞を組織診断することにおいて,AIが作成した画像は判断材料としての有用性を示したという。

特別な標識をしていないがん幹細胞をAIが検出したことは,将来の医生物学的医療の新しい可能性を示したもの。各種がん幹細胞の細胞形態を学習したAIを細胞ごとに用意することで,「培養したがん幹細胞の幹細胞性評価」や「腫瘍組織のがん幹細胞診断」といった新しい測定技術に応用されることが期待される。

また,生命科学や医学分野の画像解析において,未同定の形態の解析にAIを使った今回の研究手法が応用されることが期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 浜松ホトニクス、AI半導体向け倒立型エミッション顕微鏡を発売

    浜松ホトニクスは、AIチップレットやHBM(High Bandwidth Memory)を採用した2.5D/3Dパッケージなど、先進半導体パッケージの故障解析に対応する倒立型エミッション顕微鏡「iPHEMOS-DDX」を…

    2026.09.30
  • 【解説】CPOモジュールの量産を阻む「自動検査」の壁と、AIデータセンター光化の行方

    生成AIの普及に伴い、データセンターではGPUなどの演算性能だけでなく、大量のデータをいかに高速かつ低消費電力でやり取りするかが大きな課題となっている。サーバーやスイッチ内部の通信速度が高まるほど、従来の電気配線では信号…

    2026.09.22
  • 【解説】AIで「シリコンサイクル」は変わるのか

    半導体市場はこれまで、需要増を受けた増産が供給過剰を招き、価格下落や設備投資の抑制につながる「シリコンサイクル」を繰り返してきた。ところが生成AIの急速な普及によって、この波の形が変わる可能性が出てきた(関連記事)。 A…

    2026.08.12
  • 半導体市場1兆ドル到達は4年前倒し SEAJが製造装置需要を上方修正

    日本半導体製造装置協会(SEAJ)は、2026年度から2028年度までの半導体・FPD製造装置の需要予測を発表した(ニュースリリース)。半導体製造装置の日本製装置販売高は、AIサーバー向け先端ロジックへの旺盛な投資や、広…

    2026.07.06
  • 【解説】IOWN AI ファンドが示す、AI時代のフォトニクス産業の広がり

    AIインフラの重心が、AIモデルを作るための大規模な設備から、完成したAIを現場に近い場所で動かす仕組みへ移りつつある。NTTなどが2026年6月10日付で発表した投資ファンド「IOWN AI Fund」(関連記事)が注…

    2026.06.23

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア