阪大ら,最高性能の半導体スピン伝導素子を実証

大阪大学,東京都市大学の研究グループは,次世代の高速電子デバイスや光デバイスへの応用が期待されている半導体材料のゲルマニウム(Ge)を用いたスピントロニクス電子デバイス構造における新技術を開発し,室温における世界最高性能(消費電力1/10・性能指数100倍)を実現した(ニュースリリース)。

2011年に米グループから世界で初めて低温におけるGe中のスピン伝導の観測が報告されたが,そのデバイスの電極構造はFe/絶縁体(MgO)/Geという構造であり,スピン注入・スピン伝導を実証する際に高抵抗絶縁体層の存在による大電圧駆動を要するため,大きな課題となっていた。

また,この高抵抗絶縁体層はスピン伝導デバイスの性能指標である磁気抵抗比にも大きく影響するため,元来,低消費電力動作と高性能を両立することが困難だった。

研究グループでは,ホイスラー合金磁石という高性能スピントロニクス材料をGe上に作製する世界最高峰の技術と独自の不純物ドーピング技術を併用した手法で,世界で初めて室温スピン伝導を実証し,研究を重ねてきた。

その一方で,スピン伝導デバイスの性能指標である室温磁気抵抗比が依然として小さいことが課題だったが,最近の研究から,電極に用いているホイスラー合金磁石とGeの接合界面に,数nm領域にわたって原子同士の拡散(相互拡散)が生じており,磁石電極の性能劣化が引き起こされた結果,スピン伝導デバイスの性能も劣化していることが判明していた。

今回,これまでのホイスラー合金磁石とGeの接合界面に鉄(Fe)原子をわずかに(数原子層)挿入するだけで,上述の原子の相互拡散が抑制され,ホイスラー合金磁石の高品質化と高性能化が実現した。さらに,その高品質化によって,スピン注入の過程でエネルギーバンドの対称性マッチングが有効に作用していることが判った。

これらの結果から,室温での性能指標(磁気抵抗比)がこれまでの100倍に増大し,世界最高性能(消費電力1/10・性能指数100倍)を実現したことが明らかとなった。これは,従来の半導体へのスピン注入技術の概念を覆す発見であり,Geのみならず様々な半導体材料への応用展開が期待される原理の実証となるという。

この研究成果は,IoT技術・AI技術が益々進展する中,電子機器の消費電力の爆発的な増加に歯止めをかける革新的超低消費電力デバイス実現への道を切り拓く成果として大きな意義があるとしている。

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