プラスチックの問題を化学で解決し,持続可能なプラスチックを実現すべく,「Science to Enable Sustainable Plastics(持続可能なプラスチックのための科学)」を主題として取り上げたChemical Sciences and Society Summit(CS3:国際化学サミット)の白書が,2020年6月3日に公開された(ニュースリリース)。
プラスチックは現代社会には様々な用途で使われている。食物を新鮮かつ安全に運ぶ容器から,自動車や電子機器に必要不可欠な部品,マスクや防護服,人工臓器,ECMOなど先進的医療を可能にし,人々を保護するものまで,持続可能な社会を形成するための重要な要素となっている。
一方で,地上で生み出され放出されたプラスチックが,マイクロプラスチックやナノプラスチックとなり,環境汚染問題を引き起こしていることも研究で明らかになっている。
CS3は化学の領域で最先端の化学者が集まり,世界が直面する重要課題を取り上げ,少人数で解決に資する糸口を探ると共にその成果を広く公表することを目的とした会議体。日本化学会,科学技術振興機構(JST)のほか,英国・ドイツ・中国・米国の主要化学会と各国のファンディングエージェンシーの全10機関で会議メンバーは構成されている。
日本からは佐藤浩太郎教授(東工大),沼田圭司博士(理研),吉岡敏明教授(東北大),日向博文教授(愛媛大),高原淳教授(九州大),澤本光男教授(日本化学会),中村亮二氏(JST),宮下哲氏(JST)が参加した。
英国王立化学会の Burlington House で2019年11月10日から13日に開催した今回のサミットには,諸事情により米国は不参加となったが,日英独中の4ヵ国が参加した。
主題に加え,サブテーマとして「プラスチックの環境負荷」,「新しい持続可能なプラスチック」,「プラスチックのリサイクル特性」,「プラスチックの劣化」の4つの分科会が開催された。
分科会ごとにキーノート(KN)とポジショントークが3~4件という構成になっており,総勢約35名で3日間にわたり議論が行なわれた。今回の議長はオックスフォード大学の Charlotte Williams教授がつとめ,日本のリーダーとして九州大学先導物質化学研究所の高原淳主幹教授がつとめた。
白書はこちらよりダウンロード可能(英語)。