上智大ら,原子の内殻過程をアト秒で追及に成功

上智大学,量子科学技術研究開発機構,仏ソルボンヌ大学,理化学研究所,兵庫県立大学の研究グループは,原子の多段階内殻緩和過程の時間依存をアト秒オーダーでプローブすることに成功した(ニュースリリース)。

原子,分子,固体など広い分野にわたって高速時間分解実験(ultra-fast science)は現在大きな興味がもたれている。その為に国内外において巨大なX線自由電子レーザー(XFEL)施設が建設され高速検出技術の開発も競って進められている。実験手法はポンプ・プローブによる測定が主流であり,最近はフェムト秒オーダーの分解能が得られている。

エネルギーの高い放射光を原子にあてることによって原子の内殻電子を光電子として飛び出させることができる(内殻光イオン化)。そして残った内殻の空孔に外殻の電子が落ちる。その際に,蛍光が発生することもあれば,外殻からオージェ電子が放出されることもある。

とくに内殻閾値よりもわずかだけエネルギーの高いX線で原子の内殻空孔を作ると「ごく遅い」光電子が放出される。そのあとに放出され得るオージェ電子はずっと速いので光電子を追い越すことになる。

この「追い越し」によってオージェ電子・光電子間にPCI(衝突後相互作用)がおこり,それぞれの電子のエネルギーに変化が現れる。よって電子のエネルギーを高分解能で測定するとこれらの過程を区別できる。

原子の内殻励起では発光の寿命がアト秒のオーダーであるため,発光が起こる過程と起こらない過程を比べることによって,アト秒スケールで原子の多段階内殻緩和ダイナミックスを調べられる。

今回は放射光実験施設SPring-8のビームラインBL19LXUおよびBL17SUを用いて,クリプトン原子の内殻過程を探求したものだという。

キーワード:

関連記事

  • 理研、マルチバンチ構造のXFEL光発生に成功 SACLAでパルス繰り返し増強へ

     理化学研究所(理研)の研究チームは、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」において、複数の電子ビームの塊(バンチ)を連続して加速する「マルチバンチ構造」の電子ビームを生成し、マルチバンチ構造のXFEL光を発…

    2026.09.18
  • 東大と理研、フェムト秒軟X線ハイパースペクトル顕微鏡を開発

    東京大学と理化学研究所は、X線自由電子レーザー(XFEL)の単一パルスを用いて、試料の各位置を透過した軟X線のスペクトルを同時に取得するフェムト秒軟X線ハイパースペクトル顕微鏡を開発、実現に成功した(ニュースリリース)。…

    2026.08.21
  • 阪大など、超高強度レーザーとXFELでナノ構造内部のプラズマを直接可視化

    大阪大学、ネバダ大学、レーザー技術総合研究所、高輝度光科学研究センター、理化学研究所、関西大学は、ナノワイヤー内部で発生するプラズマの動的な挙動をX線自由電子レーザー(XFEL)を用いて直接可視化することに世界で初めて成…

    2026.06.04
  • QSTなど、超高温物質に対してSPring-8のX線を照射し構造変化を観察

    量子科学技術研究開発機構(QST)、日本原子力研究開発機構、福井大学、東京科学大学、東北大学は、大型放射光施設SPring-8において、3000℃を超える超高温下で起こる物質の変化をリアルタイムで観察できる新しい分析技術…

    2026.02.05
  • 京大など、放射光で可視化したポリエチレン内部密度揺らぎの可視化に成功

    京都大学と三井化学は、大型放射光研究施設SPring-8でのX線散乱測定および高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所のフォトンファクトリーにおける走査型透過X線顕微鏡(STXM)を組み合わせた解析、延伸し…

    2026.01.30

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア