東大ら,超伝導体のトポロジーの判定法確立

著者: higa

東京大学,米マサチューセッツ工科大学の研究グループは,トポロジカル超伝導体の新候補物質の探索に役立つ包括的な理論を提案した(ニュースリリース)。

従来,物質は電気伝導性や磁性などの性質に着目して分類されていた。しかし今世紀に入り,「トポロジー」によって物質の性質が大きく異なることが明らかになり,物質のトポロジカルな性質は世界中で活発に研究されるようになった。

トポロジカル相の例である「トポロジカル超伝導体」は,その表面や端にマヨラナ粒子が現れるという,通常の超伝導体とは異なる性質を示す。現在でも,マヨラナ粒子の検出と制御による次世代の量子コンピューターを実現するために,トポロジカル超伝導体の探索が求められているが,実際にトポロジカル超伝導性を示すと確認されている物質はほとんど無いのが現状となる。

各々の物質の持つトポロジーを直接計算したり実験的に判定したりすることは一般に非常に難しい。しかしその物質の持つ結晶対称性の表現に着目することで,その物質のトポロジーを容易に判定する手法が近年確立された。

この手法は「対称性指標」と呼ばれ,実際にこれを用いて「トポロジカル絶縁体」の候補物質が数多く発見された。この手法を絶縁体だけでなく超伝導体へと拡張しようとする試みはこれまでもあったものの,さまざまな課題が残されていた。

この研究では対称性指標の方法論を一般的な形で超伝導体へと拡張することに世界で初めて成功した。具体的には,全4196種類の超伝導体の対称性のそれぞれに対し,トポロジカル超伝導体を結晶対称性の表現に基づいて系統的に分類した。

これにより与えられた超伝導体がトポロジカルかどうかを簡便に調べることが可能になり,「トポロジカル結晶超伝導体」や「高次トポロジカル超伝導体」などさまざまな種類のトポロジカル超伝導体の候補物質を探索する指針となる。

近年活発に研究が行なわれているデータ駆動的な物質探索と組み合わせることで,トポロジカル超伝導体候補物質が発見され,将来的な量子コンピューターの実用化につながるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 科学大ら,空飛ぶトポロジカル3次元周期構造を生成

    科学大ら,空飛ぶトポロジカル3次元周期構造を生成

    東京科学大学,東京大学,慶應義塾大,シンガポール南洋理工大学は,伝搬する電磁波の中に周期的な3次元トポロジカル構造を生成する手法を開発した(ニュースリリース)。 幾何学的な変化に対して不変な性質であるトポロジーが粒子のよ…

    2025.08.22
  • 理科大ら,薄膜生成時の枝分かれ現象をAIで解明

    東京理科大学,岡山大学,京都大学,筑波大学は,トポロジーと自由エネルギーを活用した機械学習(AI)解析を実施し,薄膜結晶の電気的特性に大きな影響を与える樹枝状構造の枝分かれメカニズムを明らかにした(ニュースリリース)。 …

    2025.04.16
  • 筑波大ら,トポロジカル相からカオスへの転移を発見

    筑波大学と東京大学は、非線形なトポロジカル物質を理論的に解析することで,それがトポロジカル相からカオスへの転移を起こすことを明らかにした(ニュースリリース)。 物理学において,トポロジーの考え方は幅広く応用されている。ト…

    2025.01.30
  • 東大ら,強相関ワイル金属に光照射で伝導特性を観測

    東京大学と東北大学は,強相関ワイル金属として知られるマンガン化合物に強い光を照射して極端非平衡状態を作ることで,平衡状態とは質的に異なる伝導特性が現れることを発見した(ニュースリリース)。 マンガンとスズの合金であるMn…

    2025.01.24
  • NTTら,光のトポロジカル相転移の引き起こしに成功

    日本電信電話(NTT)と東京工業大学は、相変化物質と半導体の特殊なハイブリッドナノ構造の実現により、物質の相転移によって世界で初めて光のトポロジカル相転移を引き起こすことに成功した(ニュースリリース)。 近年、電子が持つ…

    2024.09.11
  • 東北大ら,安定でトポロジカルなキラル量子細線発見

    東北大学,大阪大学,京都産業大学,高エネルギー加速器研究機構,量子科学技術研究開発機構は,テルルの量子細線が1次元トポロジカル絶縁体であることを明らかにした(ニュースリリース)。 トポロジカル絶縁体は,次世代の超低消費電…

    2024.06.06
  • 茨城大,カイラル結晶構造と反強磁気秩序を明らかに

    茨城大学,高エネルギー加速器研究機構(KEK),総合科学研究機構,J-PARCセンター,東北大学は,Remeika相化合物のうちネオジム・ロジウム・錫(スズ)を含むNd3Rh4Sn13が示す結晶構造相転移と磁気秩序の詳細…

    2024.05.07
  • 阪大ら,高い操作性を持つ光周波数変換機能を実現

    大阪大学,東京大学,理化学研究所,学習院大学,島根大学は,磁化と実効的な電気分極を持つワイル半金属において,非線形光学効果の1つである第二次高調波(SHG)が極めて高い効率で発生することを示し,そのSHGの強度が光の進行…

    2024.03.12

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア