NINS,左右の協調的な運動に新たな知見

著者: higa

自然科学研究機構(NINS)の研究グループは,dmrt3aという転写因子陽性のdI6神経細胞とdbx1bという転写因子陽性のV0d神経細胞が,交叉性抑制性細胞であり,これらが協調的に働くことで,左右の協調的な運動が作られていることを示した(ニュースリリース)。

歩行運動における左右の手足,および,足を持たない魚類の遊泳運動においての左右の筋肉の協調運動は,スムーズな動きを作るうえで大変重要であることが知られている。この協調運動は脊髄神経回路によって作られることが知られているが,どのような神経細胞が重要な働きをしているかはわかっていなかった。

この研究では,dmrt3aという転写因子を発現する交叉型抑制性細胞とdbx1bという転写因子を発現する交叉型抑制性細胞に着目し,これらが協調して,左右の協調的な運動を生み出していることを明らかにした。

研究グループは,まず,ゼブラフィッシュ稚魚を用いて,脊髄交叉型抑制性細胞を可視化することに成功した。今回,dmrt3aという転写因子陽性のdI6神経細胞(dmrt3a-dI6神経細胞)とdbx1bという転写因子陽性のグリシン作動性の神経細胞(V0d神経細胞)をGFP(緑色蛍光タンパク質)を用いて可視化し,この2つのグループの神経細胞が両方とも,交叉性抑制性細胞であることを示した。

次に研究グループは,dmrt3a-dI6神経細胞とV0d神経細胞にチャネルロドプシンという光によって発火が制御できるタンパクを発現させ,これらの細胞が反対側の様々な神経細胞に結合し,抑制をかけていることを明らかにした。

これらの細胞群の魚の遊泳行動中に発火するタイミングを電気生理学的手法で解析した結果,これらの細胞は,同側の筋肉が屈曲するタイミングで活動していることを明らかにした。

つまり,dmrt3a-dI6神経細胞とV0d神経細胞は,反対側の神経細胞群が活動しないように抑制をかけていることが明らかになった。さらに,dmrt3a-dI6細胞は普通の遊泳中により発火し,V0d神経細胞はより速い遊泳および逃避行動中に発火するということも明らかにした。

また,ジフテリアトキシンいう神経細胞を破壊する毒素をdmrt3a-dI6神経細胞に発現させることにより,遊泳行動におけるdmrt3a-dI6神経細胞の役割を明らかにした。dmrt3a-dI6神経細胞を破壊した魚の遊泳行動は,しばしば左右の協調性が失われ,筋肉の両収縮が頻繁に起こっていた。この結果より,dmrt3a-dI6神経細胞の遊泳行動における左右協調性への重要性が示された。

魚の脊髄回路は,ほ乳類の脊髄神経回路の元となる回路を有していると考えられているため,この研究が,さらに複雑な回路を有するほ乳類の脊髄神経回路を理解する基礎となることが期待されるとしている。

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