広島大ら,光を感知する超分子構造形成に新知見

著者: higa

広島大学,神戸大学,大阪大学の研究グループは,動物の網膜桿体細胞内の円板膜において,外界から目に入った光を実際に感知するロドプシンタンパク質が形成する,列状の超分子構造の形成メカニズムを明らかにした(ニュースリリース)。

動物の目で光を実際に感知するロドプシンは,網膜内の円板膜で列状超分子を形成している。ロドプシンが存在する円板膜は,多量の不飽和脂質に加え,少量(脂質の8%程度) のコレステロールと飽和脂質から構成されている。

コレステロールと飽和脂質は膜内で脂質ラフトと呼ばれるナノサイズのドメインを形成することが知られ,細胞研究の多くの分野で注目されている。神戸大は,円板膜でのラフトの存在を初めて報告し,その光信号変換での重要性を指摘した。また,ロドプシンの2量体化がロドプシンを劇的にラフト親和的にすることを明らかにしてきた。

さらに最近,円板膜内でロドプシンが0.1µm大で短寿命のラフト領域を自己組織化していることを発見し,ロドプシン超分子構造形成に2量体化依存的ラフト親和性が重要な役割を果たすことを強く示唆した。

しかし2つのロドプシンが互いにどのような向きで結合しているかについての2つのモデル構造を比較すると,強いラフト親和性を持つ部位(ロドプシンの飽和脂肪酸修飾)が,一方では2量体の遠く離れた両端に,もう一方では2量体の中心付近に位置することが分かる。つまりロドプシン2量体とラフトドメインの相互作用の詳細は,両モデル間で全く異なると考えられたという。

そこで広島大は,神戸大及び阪大による実験上の知見に基づいて,上記2種類のロドプシン2量体モデルについて,それらが不飽和及び飽和脂質からなる脂質2層膜に組み込まれた粗視化分子動力学モデルを構成し,動態をシミュレーションした。

その結果,ラフト親和的な部位をその中心付近に持つロドプシン2量体だけが列状超構造を形成し得ることや,ラフトドメインが2量体を繋ぐ「糊」の役を担うことで,長い列状超分子構造が形成・維持されることが明らかになった。

この知見は,ロドプシンと結合し他の分子に光の情報を伝えるタンパク質にとって,この特異な超分子構造がどのような働きをするのかを明らかにする基盤となる。そして脳神経に光の情報を効率よく伝えるメカニズムの理解に繋がっていくという。

またこの研究成果は,膜タンパク質の自己集合に伴うラフト親和性変化が,どのように自己組織化・超分子構造形成に関与するかについて示しており,蛋白質・脂質の動的な自己組織化や局在決定という生体膜研究の未知の領域に重要な手がかりを与えるものとしている。

キーワード:

関連記事

  • 【interOpto2025】QDレーザ、レーザー網膜投影技術を展示

    interOpto / 光とレーザーの科学技術フェアで、QDレーザ【ビジョンテクノロジーゾーン No. C-38】は、レーザー網膜投影技術を展示している。 この技術は、レーザー光を用いて目の網膜に直接映像を投影するもの。…

    2025.11.13
  • 東大,世界初の紫外光応答イオンチャネルを発見

    東京大学の研究グループは,原生生物の一種であり,動物や菌類に近縁で,真核生物の進化の理解に重要とされるアプソモナド類から,紫外光に応答する新しいタイプのイオンチャネルタンパク質である「アプソモナドロドプシン」を発見した(…

    2025.10.23
  • 東大ら,ロドプシンの光利用効率化システムを発見

    東京大学,理化学研究所,海洋研究開発機構,東北大学,生産開発科学研究所,東京農業大学は,ロドプシンの新たな光利用効率化システムを報告した(ニュースリリース)。 ロドプシンは膜タンパク質と色素の一種であるレチナールから構成…

    2025.09.12
  • 東大,独特な光反応特性を生み出すアミノ酸を特定

    東京大学の研究グループは,光に応答するタンパク質・ロドプシンの構造を改変することで,ユニークな光反応特性を生み出すアミノ酸の組み合わせを特定することに成功した(ニュースリリース)。 ロドプシンは動物の視覚を担うタンパク質…

    2025.06.25
  • 国立遺伝学研究所ら,網膜内アミノ酪酸の機能を解明

    国立遺伝学研究所,米カリフォルニア大学サンディエゴ校は,網膜でのGABA(ɣ-アミノ酪酸)信号の機能的作用を明らかにした(ニュースリリース)。 ニューロン間での情報のやり取りは,多種多様な神経伝達物質が担う。とりわけGA…

    2025.04.21
  • OIST,錐体細胞が規則的なパターンを作る機序を解明

    沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,ゼブラフィッシュの網膜内の色を感知する細胞において,Dscambと呼ばれるタンパク質が “自分の仲間を避ける自己回避” をすることで,細胞同士が最適な間隔を保ち,最適な…

    2025.03.27
  • 北大,プロテオロドプシンの生物学的意義を解明

    北海道大学の研究グループは,南極にすむ細菌がプロテオロドプシンと呼ばれる光受容体タンパク質を介して極限環境の中を生き抜く仕組みの一端と,それが低温環境に適応したプロテオロドプシンの機能によって支えられていることを明らかに…

    2024.10.15
  • 豊技大,視覚的な光沢感と瞳孔反応の関係を解明

    豊橋技術科学大学の研究グループは,視覚的な光沢感と瞳孔反応の関係を明らかにした(ニュースリリース)。 人間の目に入ってくる光量を調節する器官である“瞳孔”は,物理的に明るいものを見ているときに小さくなり(縮瞳),暗いもの…

    2024.04.18

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア