筑波大ら,光合成しない根の葉緑体形成を解明

筑波大学,東北大学,理化学研究所,国際農林水産業研究センター,岐阜大学の研究グループは,イネの窒素同化に不可欠な細胞質局在型グルタミン合成酵素(OsGS1)のアイソザイム(同一の生化学反応を触媒する複数の酵素群)であるOsGS1;1が,光合成を行なわない根の葉緑体形成に大きく関わることを明らかにした(ニュースリリース)。

窒素は肥料の三大必須栄養素の一つで,植物の生存に不可欠な葉緑素やアミノ酸等の材料となる。植物体内に取り込まれた窒素はアンモニウムに変換された後,グルタミン合成酵素(GS)によりアミノ酸の一種であるグルタミンを作る。植物は細胞質局在型GS1をコードする遺伝子を複数個持っているが,植物が多数のGS1アイソザイムを持つ理由は明らかにされていなかった。

この研究では,食糧として重要な作物であるイネのGS1アイソザイムの中で,窒素肥料を与える時期として効果的な生育初期段階で発現するOsGS1;1および OsGS1;2に着目した。

それぞれの遺伝子を破壊した変異型イネを解析した結果,Osgs1;1変異体の根では中心代謝に属する糖類やアミノ酸類の蓄積バランスが崩れるのに対し,Osgs1;2 変異体ではアミノ酸類の量のみが減少することが分かった。

さらに,Osgs1;1変異体では,光合成を行なわない根の部分に葉緑体が形成されることを明らかにした。OsGS1;1は炭素・窒素代謝の恒常性や葉緑体形成など広範な現象に関わり,Osgs1;2は代謝中のアミノ酸生合成制御に特に関わっていることになるという。

この研究により,イネが巧みにGS1アイソザイムの役割を使い分けることが明らかとなり,炭素代謝,窒素代謝およびそのバランスを制御できる可能性が見えてきたという。

光合成を行なわない根に葉緑体を作らせるには,GLK2という転写因子が深く関わることが知られている。今回発見したOsgs1;1欠損変異体の根における葉緑体形成に,この転写因子は関与しないことも見いだしている。

これまで知られてこなかった窒素同化が関わる葉緑体形成の仕組みを明らかにすることで,根に光合成能力を付加する新たな方法の開発につなげることができるとしている。

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