生理研ら,脳内pHをCMOSセンサーでイメージング

生理学研究所,豊橋技術科学大学の研究グループは,生体への適用が可能な高精細pHイメージングツールを開発した(ニュースリリース)。

てんかんや脳虚血などの病気では,脳細胞の外側でpHが大きく範囲を超えて変化し,脳の異常活動を引き起こすことから,病気とpHの関連性が指摘されてきた。pHの異常が脳のどこで起きているのかが分かると,病気の原因の理解や新たな治療法に結びつく可能性がある。

従来のpHを計測する方法は,pH電極を用いた極めて局所の「点」の計測に限られてきた。そのため,計測箇所以外の領域において,pHがどのように違うのか,脳の活動に応じてpHが時空間的にどのように変化しているかなどの大域的な情報は得られなかった。

これまで核磁気共鳴画像法(MRI)を用いたpHイメージングの手法はあったが,脳神経活動がミリ秒単位で起こることや神経細胞体の大きさが約50μmであることを考えると,その時空間分解能はとても低く(時間分解能6秒,空間分解能4mm),神経活動によって起きる素早いpH変化を計測することは困難であり,神経細胞や局所神経ネットワークレベルの空間スケールでの変化が見落とされていた可能性があった。そこで,新たな高時空間分解能を持つ生体イオンイメージングツールの開発が求められていた。

今回開発したセンサーは時間分解能20ミリ秒,空間分解能23.55μmという非常に高い時空間分解能に加えて,センシングエリアの小型・薄型化によって,マウスなどの小動物の小さな脳にも使用することが可能な優れた性質を持っている。

また,小型ながら幅0.72mm,長さ3.00mmというセンサー範囲を確保することで,マウスの脳内において約50μmの微小な神経細胞体の活動を測定領域とするpHイメージングを行なうことが可能となった。

神経活動に伴う脳内pHの変化が,どれくらいの時空間スケールで生じているかを検証するため,さまざまな視覚パターンをマウスに見せたときに,一次視覚領域と呼ばれる脳領域におけるpH変化をイメージングした。

その結果,視覚パターンごとに異なる脳内空間パターンでpH変化が観察された。さらに,変化のあった領域に注目することで,神経活動によって脳内pHがミリ秒単位の時間スケールで刻々と変化することを明らかにした。このように,これまでの手法では実現できなかった空間的・時間的に高精細な生体脳pHイメージングに世界で初めて成功した。

今回研究グループが新しく開発したセンサーは,今後,新たな病気の仕組みの解明や治療開発の研究において重要なツールになるとしている。

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