岡山大学,独バイロイト地球科学研究所,仏クレルモン・オーベルニュー大学,高輝度光科学研究センター(JASRI),仏SOLEIL放射光施設の研究グループは,30GPa,3000Kの圧力・温度範囲でケイ酸塩メルト(多成分が混合した高温溶融状態のケイ酸塩)の粘性率測定に成功した(ニュースリリース)。
この成果の基盤に独自開発した半導体ダイヤモンドヒーターがあり,これは高温が発生できるだけでなく,X線透過性が高いという特徴がある。炭素だけからなる純粋なダイヤモンドは絶縁体だが,ホウ素を添加すると電気伝導度が増加し半導体になる。
半導体ダイヤモンドヒーターは,この半導体ダイヤモンドを超高圧実験での加熱用ヒーターとして応用したもの。研究は,日本の大型放射光施設SPring-8のBL04B1とSOLEIL放射光実験施設で行なわれた。SOLEILでの実験では,仏クレルモン・オーベルニュー大学のグループと協力した。
ケイ酸塩試料中においた金属球はケイ酸塩が熔解すると熔解メルト中を沈降し,その様子をX線イメージング法で観察した。耐熱性とX線透過性の高い半導体ダイヤモンドヒーターはこの研究に最適だという。
得られた粘性率データをもとに,マグマオーシャンから析出した結晶が沈降するかどうかを考察した。その結果,深さ1000km付近で析出したブリッジマナイト(地球内部に最も多く存在する鉱物)の結晶がより深部へ沈降するという結果が得られた。沈降したブリッジマナイト結晶は下部マントル1000-1500kmの高粘性率層を形成する。
今回,下部マントル高粘性率層の成因が明らかになった。この成果は,実際のマグマオーシャンの粘性率を3つの端成分の粘性率測定結果から見積もったもので,今後,実際の組成での直接測定を検討しているとしている。