富士経済は,人手不足の影響を受けて省人化・効率化を図ったソリューションの提案が求められ,新たな需要が創出されつつあるセキュリティ関連の機器・システム・サービスの国内市場を調査し,その結果を「2019セキュリティ関連市場の将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
この調査では,監視カメラシステム分野5品目,アクセスコントロール分野6品目,イベント監視/通報関連機器分野3品目,自動車分野2品目,家庭向け機器/サービス分野8品目,危機管理/事故防止対策分野9品目の市場の現状を分析し,将来を予想した。
これによると,2018年の市場は2017年比3.6%増の9,864億円となった。2019年は都市部の再開発向けが伸びており,特にアクセスコントロールや監視カメラシステム分野が比較的好調で市場は2018年比3.4%増の1兆201億円が見込まれる。また,市場規模は小さいもののドライブレコーダーなどの自動車分野が大きく伸びるとみている。
2020年以降は市場規模の大きいイベント監視/通報関連機器分野や危機管理/事故防止対策分野,監視カメラシステム分野が堅調なほか,アクセスコントロール分野や自動車分野などは大きく伸びるとみている。
一方,中長期的に住宅やビルの新築件数が減少するため,家庭向け機器の防犯ロックや住宅情報盤,テレビドアホンなどは影響を受けると予想している。また,セキュリティ業界でも社会問題化している人手不足に対応し“省人化”と“効率化”をキーワードに,画像解析技術やAI,ロボティクスなどを導入したソリューション提案が進むとみている。各分野が堅調に伸び,2022年の市場は2018年比8.9%増の1兆741億円を予測した。
分野別の動向を細かくみると,市場規模が最も大きいイベント監視/通報関連機器分野は,主に警備会社が提供するサービスが中心で,今後も堅調な伸びを予想している。
中でも法人向け機械警備サービスが大部分を占め,オフィスビルや商業施設,工場など幅広い施設で導入されている。今後の伸びが期待されるのは警備用ロボット/ドローン関連サービスで,東京五輪開催を前に大手警備会社が新製品を投入しており,大規模ビルや空港などで本格的な導入が増えている。侵入センサーは,近年は外周警備需要の高まりにより屋外用センサーが堅調となる。
家庭向け機器/サービス分野は,ホームセキュリティサービスが50%以上を占め,既築住宅での需要などが安定している。潜在需要も大きいため今後も導入の増加を期待している。また,児童を対象とした登下校見守りサービス,高齢者在室安否確認サービスなども好調となる。
危機管理/事故防止対策分野では,東京五輪で使用される検査・検出装置や,近年増加している大規模災害や交通事故などに関するシステムが伸びている。中でも被災者安否確認サービスや鉄道駅ホームドア,自動車事故防止システムは長期的な伸びを期待している。
監視カメラシステム分野は,監視カメラのIPカメラが堅調に伸びているものの市場は飽和しつつあるため,大手ベンダーを中心に画像録画装置や画像伝送装置を含め,画像解析やAIなどを活用したソリューション提供を進めている。また,家庭用見守りカメラは屋内用カメラのペット対応やベビーモニターなど用途特化型が好調となる。
アクセスコントロール分野は,静脈認証/ハイブリッド型や顔認証が好調である。指紋認証からの置き換え,自治体や教育機関での情報セキュリティの厳格化,また,東京五輪のセキュリティ技術としての認知拡大をきっかけに顔認証の採用が広がると期待している。
自動車分野はドライブレコーダーと後付け盗難防止装置が対象となる。ドライブレコーダーは「あおり運転」の社会問題化などを背景に順調に市場が伸びている。また,ドライブレコーダー設置による自動車保険の割引やテレマティクス保険などの本格化が市場を後押ししている。後付け盗難防止装置は車両盗難件数の減少などにより伸び悩んでいるという。
・バイオメトリクス
静脈認証は,防水性の高い製品や光に対する脆弱性を改善した製品などが投入されたことが使用シーンの拡大につながり,市場は拡大を続けている。入退室管理用途では,なりすましや偽造されにくいことがユーザーに評価されており,高いセキュリティを必要とするデータセンターや病院などでの導入が増加している。また,住宅向けもマンションなどで需要が増えている。
形態としては静脈認証機器単体での導入ではなく,非接触カード式入退室管理システムや他の認証と連携して導入されるケースが増加している。また,PCアクセス管理用途では,二要素認証の普及や働き方改革などを背景に堅調な需要がみられる。
自治体による推奨や,教育機関の情報セキュリティガイドラインの刷新などが追い風となり,医療・教育機関での二要素認証での導入が増えている。また,働き方改革によりノートパソコンの普及がさらに進んだことや,勤怠時間の管理で採用されるケースが増えている。
ハイブリッド型認証は,静脈認証と指紋認証の組み合わせによる二要素認証がセキュリティの高さにより評価され需要を獲得している。高いセキュリティが求められる自治体や金融機関,病院などが主な導入分野となっている。また,勤怠管理システムとの連携など高付加価値化した形で導入されるケースが増えている。
顔認証は,東京五輪で認証技術として採用されることにより認知度が向上しており,2019年の市場は2018年比75.0%増の28億円と大きく伸びる見込みとなる。当初は利便性とセキュリティ性の高さにより需要を獲得していたが,近年は勤怠管理システムとの連携など高付加価値化による導入も増えている。東京五輪以降は導入費用の低価格化が進むとみられ,更なる導入増加を期待している。
入退室管理用途では,非接触カード式入退室管理システムとのセット導入や,一般オフィスでも機密性の高い部屋に設置されるケースをみている。課題であった光に対する脆弱性をカバーした製品も投入されており,需要分野の広がりによる導入拡大を予想している。
また,PCアクセス管理用途は,マイナンバーカードの保管による自治体での需要増加や,教育関係の情報セキュリティガイドラインの刷新による導入増加により,堅調に伸びている。また,働き方改革による持ち運びができるノートパソコンの普及も伸びを後押ししている。
指紋認証は,他の認証への置き換わりにより縮小している。他の生体認証と比較してセキュリティ性能が低いため,入退室管理用途,PCアクセス管理用途ともに,静脈認証/ハイブリッド型や顔認証などへの移行を予想している。
・監視カメラ
IPカメラは,市場は成熟しつつあるものの,2019年も堅調な需要により2018年比10%以上の伸びを見込んでいる。ただし,参入ベンダーの増加や中国ベンダーの安価な製品が多く流通しているため,日系大手ベンダーの実績は伸び悩んでいる。日系大手ベンダーでは機器販売のみでの収益確保が難しくなっており,商品ラインアップや事業体制の見直しを進めている。
2020年東京五輪開催による監視カメラ需要は,首都圏の再開発向けなど間接的なものにとどまるとみている。2020年以降は,新規需要が伸び悩むと予想するものの,安定したリプレース需要が期待され,当面は微増と予想する。大手ベンダーを中心に画像解析や顔認証を活用した様々なソリューションの提案が進められており,店舗での来店者の属性分析や行列カウントなどセキュリティ用途以外での監視カメラの採用が増加することにより,市場の活性化を期待している。
アナログカメラは,IPカメラへの切り替えが進む一方でAHDやHD-TVIなどの高画質な同軸HDカメラが伸びており,それらが従来型のアナログCCTVカメラの減少をカバーすることにより,2019年の市場規模は前年並みと見込んでいる。今後,AHDやHD-TVIは堅調な需要が期待できるものの,アナログCCTVカメラは生産中止に向かうとみている。