北海道大学の研究グループは,青色LED励起により赤色強発光を示す新型レアアース分子の開発に成功した(ニュースリリース)。
電子産業で使用されている発光体は無機蛍光体が主流だったが,近年では蛍光色素等の発光分子も注目されている。研究グループは,有機分子とレアアースから構成される有機・無機ハイブリッド材料「レアアース分子」の開発を行なっている。
この分子は他の発光体よりも発光色が美しい(色純度が高い)という特長を有している。しかし,このレアアース分子を光らせるためには,紫外線での励起(光照射)が必要だった。
研究では,レアアース分子に新型ナノカーボン構造を導入した。このナノカーボンは,青色LEDの波長付近(450nm)に光吸収帯を持ち,ナノカーボン同士が相互作用することでレアアース分子の耐熱性向上が期待される。このナノカーボン構造の導入がこの研究の鍵となっている。
新型ナノカーボン構造を導入したレアアース分子は,ナノカーボンが積層した剛直な構造を有していることがX線構造解析によってわかった。
また,従来の発光体(無機蛍光体,有機EL用蛍光色素)よりも美しく繊細な赤色発光色を示すほか,剛直な構造をとるため300℃を超える高い熱耐久性を示し,LEDデバイスへ搭載可能であることもわかった。
このナノカーボンは青色光を集光し,そのエネルギーを効率的にレアアースに受け渡すことができる。そのため,新型レアアース分子の青色LED励起の発光輝度は,従来のものと比べて5倍以上となった。
研究グループは今後,計算科学・情報科学とのコラボレーション研究により,新型レアアース分子の機能をさらに高めていくとともに,産学間の連携を強めることで材料応用への実現を目指すとしている。