横浜国立大学の研究グループは,スローライト現象(光の進行が真空中の数十分の一以下まで遅くなる現象。フォトニック結晶により実現できる)を利用して,光ビームを自在に操作する半導体チップを開発した(ニュースリリース)。
スローライト現象を利用することで,光ビームが大きく偏向できることを発見,これを利用した2次元光ビーム操作を実現した。従来,同様の技術では回転ミラーのようなメカが必要だった。今回の技術は,メカを一切使わずに,光ビームを幅広く偏向できる点で,従来技術とは全く異なる。
実験手法として,シリコン半導体製造技術を転用したシリコンフォトニクス技術(半導体チップを製造するシリコン半導体技術を光集積チップに転用)によりフォトニック結晶(多次元的な微細ナノ構造体)を形成し,スローライト現象を発生させ,チップ状の素子を構成した。
光ビーム操作は,自動運転に搭載されるライダー(周囲の物体の3次元形状を映像化する装置)のような3次元センサーで必須の技術となる。ただし従来のメカ式は大きく,重く,消費電力が大きく,高価という問題があった。今回の技術でこれらの問題が解決され,自由な光ビーム操作が可能になれば,幅広い応用が生まれると考えられるという。
同じ半導体チップに光送受信機能を搭載すれば,そのまま指先サイズのライダーとなり,上記の応用のほか,ロボット・ドローン搭載による動作の安全度向上,スマホ搭載による認証やエンタメ,手軽な3次元記録,セキュリティセンサーなど,幅広い応用が期待されるとしている。