東大ら,光触媒反応によるアミロイド切断を観測

東京大学とスペイン・Madrid Institute for Advanced Studies in Nanoscience(IMDEA Nanociencia)の研究グループは,アミロイドに対する触媒の結合選択性や触媒が推進するアミロイドの光酸素化・切断を一線維レベルで解析・観測することに成功した(ニュースリリース)。

タンパク質が誤ったフォールディングをおこしてアミロイドへと凝集する過程は,アルツハイマー病,パーキンソン病など,様々な疾患の発症に関与する。有機合成化学教室では,アミロイドの病原性を除去し,疾患を治療できる可能性を秘めた触媒の開発を進めている。

この触媒は,光を照射することにより分子酸素から活性酸素を産生し,アミロイドに対して選択的に酸素原子を付与(=酸素化)することで,アミロイドの凝集性や毒性を抑制する。今回,原子間力顕微鏡と蛍光顕微鏡を組み合わせた時間分解的な相関解析により,アミロイドへの触媒の作用を一線維レベルで解析することに成功した。

すなわち,触媒がβラクトグロブリンから生じるアミロイド線維に結合し,ここに光を照射することでアミロイド線維が切断される様子が初めて観察された。パーキンソン病に関わるαシヌクレインでも同様の現象が観察され,アミロイド線維の切断にはヒスチジン残基の酸素化が関係していることも示唆された。

アミロイド線維の形態に対する光触媒反応の影響は,これまで巨視的あるいは間接的にしか解析できなかったが,今回,切断の様子を一線維レベルで直接観測できた点は意義深いという。この成果は,病原性アミロイドの分解除去を可能とする優れた触媒の設計に,重要な指針を与えるものと期待されるとしている。

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