農工大ら,核生成前の分子群をレーザーで可視化

東京農工大学,埼玉大学,奈良先端科学技術大学院大学の研究グループは,溶液中で分子が結晶化する過程について,レーザーを照射して生じる力で核生成の場所を操り,その過程を捉えた顕微鏡動画を解析することにより,動画の目視ではわからない核生成前の分子群の様子を可視化することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

溶液中の分子の結晶化は,物質の状態変化として物理学の基礎を成す極めて重要な研究テーマとなる。さらに,分子の立体構造を特定するために結晶化が必要なため,材料科学・生命科学や創薬産業など,基礎科学から産業に至るまで実用上でも重要と考えられる。

しかし,結晶が現れる前は分子の集まりが液体の中を漂う状態であり,この時の分子の集まりは小さすぎて顕微鏡でも見ることができない。創薬や生命科学では多様な分子を結晶化する必要があるので,結晶化の難易度が分子の種類によって異なる謎を解くためにも,まさに結晶化が始まるその直前までの段階で分子の挙動を知ることが理想的だという。

研究グループは,溶液にレーザーを照射することで光の力により分子群を集めて結晶が現れる場所を制御し,顕微鏡とカメラにより得られる動画データからブラウン運動の激しさを解析した。

それによってその動画を目視で確認するだけでは結晶が現れてから初めて変化が認識できるのに対して,結晶が現れる前からレーザーの力により溶液中の溶質分子から集まった状態が,空間的にも時間的にも不均一なパターンを形成する様子を可視化することに世界で初めて成功した。

顕微鏡の観察領域は一辺が60μm弱であり,溶液の種類や濃度や時間経過によって分子群が観察領域全体に広がっていたりレーザー照射の焦点近傍に集中していたりする様子が捉えられた。

直接可視化したのはブラウン運動の激しさであるため,そこからおよその粘度を推定したところ,水溶液中で結晶核生成前の溶質分子群が形成する状態は,ハチミツに匹敵する高い粘度を持つことまでわかったという。

この手法により結晶化に至る過程を可視化すれば,欲しい結晶構造を作製する条件を最短で見つけることができ,多様な分子の結晶化が欠かせない創薬の産業や材料科学・生物・医学への応用が期待されるとしている。

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