名古屋大学の研究グループは,人の動作から発電する透明で伸縮性をもつ発電シートを開発した(ニュースリリース)。
IoT社会が到来し,様々な場所・環境において,温度や湿度,振動などの様々な情報を得るためのセンサーの需要が急激に伸びている。これに伴い,電池に代わる交換不要な電源の開発が望まれ,環境に存在する微小なエネルギーを電力に変換する環境発電(エネルギーハーベスティング)技術が注目されている。
今回研究グループは,カーボンナノチューブ薄膜を電極材料として用いることで,透明で人の動作に追従可能な伸縮性をもつ摩擦帯電型発電シートを実現した。
作製した発電デバイスは,透明なシリコーンゴムでカーボンナノチューブ薄膜を挟んだ簡易な構造で,90%以上の高い光透過率をもつ。この発電シートの表面を手で触れることにより,その機械的エネルギーが電力に変換される。
カーボンナノチューブ導電膜を簡便なスプレーコート法により成膜し,12cm×12cmの大面積発電シートも実現した。また,発電シートの表面をプラズマ処理によって改質することにより,発電能力を8.0W/m2まで向上させることにも成功した。
これにより,直列に100個接続した青色発光ダイオード(LED)を点灯させることも可能となる。加えて,発電シートを引き伸ばしても発電能力が落ちないことを確認した。
さらに開発した発電シートを用いて,タップやスワイプといった直感的な手の動作により通信を行なうことのできる自己給電型の光通信技術を実証した。
カーボンナノチューブをスプレーにより塗布する際に,マスクを設置して発電用の3つの電極と配線を一括形成し,異なる色のLEDを埋め込んだ一体型の光送信デバイスを作製した。このデバイスは,手で触る場所の違いによって,異なる色のLEDが発光し,その色の組み合わせや順番によって様々な光信号を送信できるという。
さらにこの研究で開発した発電シートを用いて,拍手をすると光る手袋型発光デバイスを実証した。この手袋型デバイスでは,手の平側に発電シートを手の甲側に青色LEDを設置し,カーボンナノチューブを用いて配線している。
この手袋型発光デバイスは,拍手によって接続された青色LED が発光する。また,カーボンナノチューブを用いて発電シートと配線を形成したことで優れた伸縮性と耐久性をもち,手袋の脱着も可能であり,人体への装着性を実証している。
これらの技術は,将来的にウェアラブルデバイスの電源や接触センサー,配線不要でデザイン性の高いスイッチ類などへの応用が期待されるとしている。