理科大ら,機械学習で太陽光発電の異常検知

東京理科大学と太陽誘電の研究グループは,太陽光発電所の異常を機械学習によって検知する技術を開発した(ニュースリリース)。

太陽誘電のPV無線ストリング監視システム「solmiv」は,太陽光発電所の各ストリング中の一枚ずつの太陽電池パネルに対して監視ユニットを取り付け無線通信によって電圧データを収集することによって,太陽光発電所の監視を行なっている。

研究グループは,収集された電圧データに対して,One-Class Support Vector Machine(OCSVM)という機械学習アルゴリズムと独自のデータ処理により異常検出の精度を向上し,異常の有無の判定だけでなく,異常ストリングの特定が可能な方法を開発した。

OCSVMは画像認識などのクラス分け問題に用いられるSupport Vector Machine(SVM)から派生したアルゴリズムで,SVMは2クラスの入力データを分類するのに対して,OCSVMは1クラスのデータのみから学習することができる。異常検知に用いる場合には正常データのみで学習することができるため,太陽光発電所のような異常が稀にしか発生しないような場合においても適用できるという。

具体的には,OCSVMはカーネルトリックという手法により写像空間中で正常データを原点から遠ざけ,異常データを原点付近に配置されるようにする。この技術では監視ユニットから収集された各太陽電池パネルの電圧データに,データ処理を施すことで,以下のことを実現したという。

1.相対値を用いた精度向上
OCSVMでは日射量や温度に伴って各ストリングの電圧が一斉に変化する場合に対する異常検知も原理的には可能だが,得られた電圧データをそのまま学習に利用せずに,相対値に変換することで各電圧の変化を強調し,異常検出の精度向上を実現した。

2.スライド学習
太陽電池パネルには固有の経年劣化があり,異常検出に影響を及ぼすことがある。学習時に利用するデータの期間をスライドさせることで,直近の傾向に近い電圧データのみを正常とし,長期的な変動については異常判定しないような手法を導入した。

3.異常ストリングの特定
本来,OCSVMは異常の有無しか判定できなかったが,計算に含めるストリングの組み合わせを変化させることで,異常ストリングの特定を可能にした。これらにより,試験用の太陽光発電所から得られた実際の不具合のデータや模擬的に作り出した異常を高精度で検出することが可能なことがわかった。

この研究の成果は,太陽光発電所以外の発電所をはじめ長期的に保守が必要な設備に対して適用できる可能性があるため,様々な適用例について検討するとともに,異常検知の精度そのものの向上や,異常原因の特定方法の検討を進めていく予定としている。

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