稲盛財団は,2019年度の「京都賞」3部門の受賞者3名を決定した(ニュースリリース)。
本年度の受賞者は,先端技術部門ではチン・W・タン氏(香港科技大学IAS東亜銀行教授,ロチェスター大学名誉教授),基礎科学部門ではジェームズ・ガン氏(米プリンストン大学 ユージン・ヒギンズ宇宙物理学名誉教授),思想・芸術部門ではアリアーヌ・ムヌーシュキン氏(太陽劇団 創立者・主宰)にそれぞれ決定した。
タン氏は,二層からなる有機EL素子構造を考案し,発光効率が高く,低電圧で動く素子を初めて実現するとともに,構成材料や素子構造の改良で,さらに性能を向上できることを示した。この先駆的貢献により,有機EL素子の実用化の道が開かれ,これを用いた表示装置や照明機器の実現と普及がもたらされた。
ガン氏は,広大な領域の3次元デジタル宇宙地図を作るスローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)計画の構想,機器開発,データ解析など,ほぼ全てにおける指導的役割を通じて,宇宙の進化史解明に貢献するとともに,先駆的な宇宙物理学理論を数多く発表し,人類の宇宙に対する理解に多大な影響を与えてきた。
特に機器開発では,SDSSの中枢となる2.5m専用広視野望遠鏡(2),超大型モザイクCCDカメラ(3),640天体を一挙に観測できる多天体分光器(4)の設計を主導した。
「京都賞」は1984年に創設され,科学や技術,思想・芸術の分野に大きく貢献した方々に贈られる日本発の国際賞で,3つの部門の受賞者には,メダルやディプロマのほか賞金1億円が贈られる。