名古屋大学の研究グループは,旭化成と窒化アルミニウム(AlN)基板を用いた深紫外(UV-C)半導体レーザーの研究を進め,室温パルス電流注入注による271.8nmという世界で最も短波長のレーザー発振に成功した(ニュースリリース)。
研究のUV-C半導体レーザーは,旭化成のグループ会社であるCrystal ISが製造するAlN基板を用いている。この基板は,2インチでかつ103個/cm2レベルの低い欠陥密度が特長で,今回のUV-Cレーザー発振に大きく寄与している。
これまでの半導体レーザーは,発振波長336nmにとどまっており,今回の結果は,世界に先駆けてUV-C帯への短波長化の道を切り開いたもの。UV-C波長帯の半導体レーザーが実現できれば,ガス分析などセンシングへの応用,局所殺菌,DNAや微粒子などの計測・解析といった,ヘルスケア・医療分野への応用が期待される。
今回の研究では,(1)レーザーの光を閉じ込める層に特別なp型層を用いて抵抗を下げ,(2)欠陥の少ないAlN基板を用い光散乱による損失を抑えたこと,および(3)旭化成での最先端の薄膜結晶成長技術と名古屋大学C-TEFs(エネルギー変換エレクトロニクス研究館)のプロセス技術・評価技術の融合により,室温パルス電流注入による271.8nmのレーザー発振に成功した。
この結果は,世界に先駆けてUV-C帯への短波長化の道を切り開き,高出力化が切望されていた深紫外線固体光源の切り札となり得るものだとしている。今後,名古屋大学と旭化成は共同研究をさらに発展させ,室温連続発振を達成し,UV-C半導体レーザーの実用化を目指して開発を進めていくという。