NECは,多数の人々が通る改札やセキュリティゲートなどの利便性向上に向け,歩きながらでも高精度に本人認証可能な虹彩認証技術を開発した(ニュースリリース)。
虹彩認証技術では,認識対象となる虹彩が非常に小さく,個人毎に異なる虹彩の微小な模様を捉える必要があり,高精細な虹彩画像が必要となる。このため,虹彩認証利用時には利用者がカメラの正面の決められた位置に静止し,目の位置をカメラに合わせるなど,利用者に負担が掛かっていた。
今回同社は,通常の歩行速度で歩く人の虹彩を高精細に撮像するために,目の周辺領域(ROI: Region of Interest)の位置を正確に推定する技術を開発した。歩行によって生じる頭部の上下動の幅を考慮し,ROIを推定する。
虹彩を撮像する位置を通過する時にROIのみを撮像することで画像データ量を大幅に削減し,従来は困難だった高解像かつ高フレームレートの撮像を実現した。これにより,通常の歩行速度で歩く人の虹彩を,鮮明かつ高解像度に撮像することを可能にした。
さらに,高フレームレートで撮影された大量の画像から,独自の画質指標を基に,虹彩認証に適した画質の画像のみを高速に抽出する画像解析技術を開発した。撮像した画像すべてではなく,この技術により抽出した画像だけを認証すればよいため,虹彩認証を瞬時に行なうことができるという。
これらの技術により,利用者が歩いている間に認証まで完了できるようになるという。同社では今後,空港などの大規模施設におけるセキュリティゲートや電車・バスなどの改札ゲートでの本人認証など,幅広い領域で使用されることが期待されるとし,この技術を2021年度までに実用化することを目指すとしている。