東大ら,重力レンズで惑星系の質量や軌道を測定

東京大学の福井暁彦特任助教、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の鈴木大介研究員、東京大学/NASAの越本直季学振特別研究員らの研究グループは,アマチュア天文家が偶然発見した太陽系外惑星系の重力レンズ効果による星の増光現象(重力マイクロレンズ現象)を追跡観測し,惑星系の質量や軌道を正確に測定した(ニュースリリース)。

2017年11月1日(日本時間),日本のアマチュア天文家が「重力マイクロレンズ現象」(重力レンズ効果による星の増光現象)を偶然発見し,その後海外のアマチュア天文家や研究者らの追跡観測によって,重力レンズを引き起こした恒星(Kojima-1L)のまわりに惑星(Kojima-1Lb)が存在することが明らかとなった。

研究グループはこの極めて稀な現象を国内外の望遠鏡を使って独立に追跡観測し,これまでに分かっていなかった惑星系の質量や軌道を正確に測定した。

観測は,国立天文台の188cm望遠鏡,同91cm望遠鏡,東京工業大学の50cm望遠鏡(いずれも岡山県),京都産業大学の1.3m望遠鏡(京都府),JAXA宇宙科学研究所の1.3m望遠鏡(神奈川県),カナリア天体物理学研究所の1.5m望遠鏡(スペイン・カナリア諸島)など国内外の複数の望遠鏡を用いて,可視光から近赤外線にかけて複数の波長帯でこの重力マイクロレンズ現象の追跡観測を行なった。

その結果,主星の質量は太陽の約0.6倍,惑星の質量は地球の約20倍であり,惑星の軌道半径は約1天文単位であることが分かった。この軌道領域は惑星形成時の「雪線」(水が凝結する境界)の位置に相当し,固体物質が豊富に存在するため,惑星が最も活発に形成されると考えられるという。

一方,この領域ではどの観測手法においても惑星を見つけることが難しいため,海王星質量以下の軽い惑星の探索はまだ十分に進んでいなかった。

今回,発見確率の低い海王星質量の惑星が偶然この領域で発見されたことから,雪線付近に海王星質量の惑星が豊富に存在している可能性が示唆される。

また,この惑星系はこれまでに重力レンズ法で発見された惑星系の中で最も地球に近く,かつ主星が最も明るいため,他の重力レンズ惑星系では難しい主星の分光観測が可能。そのため,今後主星の詳細な特徴(年齢や重元素量など)を調べたり,惑星のより正確な軌道を調べたりすることが出来ると期待されるとしている。

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