農工大ら,LMD-MSで新種のアミロイド源を同定

著者: sugi

東京農工大学とLSIメディエンスらの共同研究グループは,老齢ラットの乳腺において高頻度にアミロイド(病原性異常タンパク)が蓄積することを発見し,その原因として,新種のアミロイドタンパクを同定した(ニュースリリース)。

アミロイドとは生体タンパクの異常な折りたたみによって生じる難溶性の異常タンパクであり,各種臓器に蓄積することによってアミロイドーシスを引き起こす。人のアミロイドーシスの病態研究は主に動物モデルを用いて実施されるが,人の病態に対応する十分な動物モデルが存在しない状況が続いていた。

アミロイドーシスの同定は通常,免疫組織化学という抗体を用いた手法が用いられるが,動物を対象とした研究では,動物種によって抗体の感度に違いが生じ,正確な評価が出来ない。研究では免疫組織化学の欠点をカバーすべく,質量分析を用いてアミロイドの同定に挑戦した。

まず研究グループは老齢ラットの乳腺を組織学的に検索した結果,とても小さな針状のアミロイド沈着を発見した。このアミロイドの沈着は老齢雌ラットの83%にみられることが分かった。一方,若齢のラットにおいてはアミロイド沈着はみられなかった。

老齢ラットと若齢ラットの違いはCorpora amylaceaと呼ばれる乳汁中の球状構造体形成の有無であり,アミロ
イドは常にCorpora amylacea表面に沈着していたという。

病理組織学的解析,透過型電子顕微鏡観察,走査型電子顕微鏡観察,免疫組織化学および,レーザーマイクロダイセクション-質量分析(LMD-MS)法を用いたプロテオーム解析の結果,アミロイドの原因タンパクとしてLipopolysaccharide binding protein (LBP) を同定した。

LBPは自然免疫に関与する分泌タンパクであり,人を含めた様々な動物種で乳腺に発現している。研究では加齢による乳腺でのCorpora amylacea の形成がアミロイド形成のリスクファクターであることを明らかにした。

今回の研究成果は将来発生する恐れがある人の偶発性アミロイドーシスの発生予測を行なう上で,有用な知見を提供するものだという。

今回,LMD-MS法を使用したことによって,新規アミロイドの同定を可能とした。質量分析法は膨大な生物データベースを引用することで多様な動物種に対応可能であり,免疫組織化学に変わる新たなタンパク同定法としての応用が期待されるとしている。

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