香川大学の研究グループは,空間チャネルネットワーク実現の鍵となる,全く新しい構造の光スイッチ「コア選択スイッチ」を考案し,その原理動作確認に成功するとともに,コア選択スイッチを用いた空間チャネルネットワークの実証実験に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
現在のネットワークは,ルータなどの電気スイッチ装置からなるIPネットワークと波⻑クロスコネクト装置からなる波⻑多重ネットワークの階層構造を採用している。隣接する波⻑クロスコネクト装置は単一モードファイバーで接続され,複数の波⻑の光信号が単一モードファイバーのコアに多重化されて伝送し,波⻑選択スイッチと呼ばれる光スイッチを用いて,波⻑ごとに光信号の経路を細かく切り替えている。
これに対して,研究グループが提唱している将来ネットワークでは,波⻑多重ネットワークの下部に,マルチコアファイバーで接続された空間クロスコネクト装置からなる空間チャネルネットワークを新たに配置する。空間クロスコネクト装置は,マルチコアファイバーのコアごとに光信号の経路を切り替えることで,光信号を経済的かつ⾼品質に転送する。
今回,研究グループが考案したコア選択スイッチは,マルチコアファイバーレイと微小レンズアレイ,ミラーアレイから構成された独自の空間光学系を採用している。マルチコアファイバーレイは,中央に配置された入⼒マルチコアファイバーと,その周囲に配置された出⼒マルチコアファイバーから構成されている。
入⼒マルチコアファイバー中の4つのコアを伝搬してきた各光信号は,直後に配置された微小レンズにより,出射角度の異なる4つの光ビームに分かれて空間を進み,集光レンズによりミラーアレイ上の個々のミラー面上に結像する。各ミラーの角度を個別に調整することで,各光ビームが出⼒すべき出⼒マルチコアファイバーに結合し,出⼒される。
今回の研究では,各機能によりスイッチされた光信号の符号誤り率を測定することで,提唱する空間チャネルネットワークが超大容量光信号を信号品質の劣化なしに転送可能であることを実験的に確認した。
研究グループは,この技術を利用することで,光スイッチ1台当たりのスイッチング容量の現⾏比30倍以上の超大容量化と,1ビット当たりの転送コストの現⾏比30分の1以上の経済化が可能になるとしている。
なお,今回の実験では実験系構築の容易さの点を考慮して,ミラーアレイ素⼦として液晶ベースの空間光変調器を用いたが,今後,シリコンの微細加工技術に基づく微小ミラーアレイを採用することで,小型で簡易な構成のコア選択スイッチが実現可能としている。