九州工業大学,仏パリ・サクレー大学,ポワティエ大学,メキシコ国立工科大学高等研究所の研究グループは,新しい熱輸送現象を測定することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
従来,薄膜の厚みが100nm以下になると熱を輸送する格子振動(フォノン)が伝わりにくくなり,熱輸送が低下することが知られてきた。
しかし今回,さらに膜を薄くしていくと体積に対する表面の割合が大きくなるため,表面にのみ存在する電磁波(表面フォノンポラリトン)の輸送する熱エネルギー量が相対的に増え,結果として断面積あたりで評価する熱伝導率が増加することを発見した。
今後は,この発見によりフォノンだけでなく表面フォノンポラリトンによっても熱が輸送されることが示されたため,例えば,深刻な発熱問題を抱えている電子機器の冷却技術に新たな選択肢を提供することになるという。
パリ・サクレー大学とポワティエ大学は,表面フォノンポラリトンによって薄膜における熱輸送が促進されることを提唱してきたが,これまで対象となる超薄膜の作製が極めて難しく実験で示されることがなかった。
今回,北九州学術研究都市の施設利用で作製が難しい実験系(膜厚 20nm の自立膜)の作製に成功し,測定ではメキシコ国立工科大学高等研究所のグループにも試料提供して研究を確実なものとした。