慶應義塾大学病院は,最新鋭の赤外線誘導式人工膝関節手術支援ロボット「NAVIOTM」(英Smith&Nephew製)を導入した(ニュースリリース)。
日本で変形性膝関節症の潜在患者数は2,500万人にのぼるといわれ,毎年約8万の人工膝関節の手術例がある。また,人口膝関節のインプラント素材の耐用年数の増加により,米国では50代,60代の若年者の手術も増えてきている。
しかし,若年で活動性の高い場合,正確にインプラントが設置されなければ,インプラントの摩耗や弛みを生じるためインプラントが長持ちしなくなり,再手術が必要になることが問題とされていた。
これまで同病院では,コンピューターナビゲーションを用いて精度の高い人工膝関節置換術を行なってきたが,今回,関節表面の形状や関節の動きを高精度で読み取る手術支援ロボットを導入し,ヒューマンエラーを減少させ,従来を上回る正確な手術を行なう。
このロボットは,赤外線カメラと反射マーカーアレーにより関節の位置情報をキャッチし,関節表面の形状や関節の動きを正確に読み取ることで,骨を切る誤差を1mm,1度以下に低減し,インプラントの長期安定性を実現する。
また,手術中にグラフ化された筋肉や靭帯のバランスを個人に合わせて微調整しながら,骨を掘削することが可能で,バランスのとれた違和感のない膝の動きを実現する。特に,従来の人工膝関節手術では切除せざるを得なかった十字靭帯をすべて温存することが可能で,若年者の活発な活動に対しても対応可能な膝を再現することができるという。
このロボットを導入するのは,国内では4施設目となる。同病院は,このロボットによって再現された違和感のない膝は,術後のリハビリがスムーズで早期社会復帰が見込まれ,かつ長期間安定した状態で使用できるため,患者負担軽減につながることが期待できるとしている。