新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)と共同で,データセンター(DC)や高性能コンピューティング(HPC)内の大容量光接続に向けた小型の16波長多重光回路チップを,シリコンを材料とする光素子技術(シリコンフォトニクス技術)で開発した(ニュースリリース)。
DCやHPC内の高性能サーバー用の大規模集積回路(LSI)やスイッチLSIは,2025年に現在比5倍以上となる,1ノード当たり10Tb/s以上の伝送帯域が必要になると考えられる。この大容量光接続を実現するには,波長多重光通信を可能とする小型で高速光信号を多重できる16波以上の波長多重光回路が必要となる。
さらに,光ファイバーを経由したランダムな偏波状態の光信号でも安定して合分波できる「偏波無依存合分波動作」が求められる。
これまでは,ガラスを用いて光回路を作製してきたが,センチメートルオーダーのサイズで,光電子集積インターポーザーに適用可能な超小型光モジュールを作ることは困難だった。
今回開発した16波の波長多重光回路は,2波長の遅延マッハ・ツェンダー干渉(DMZI)型フィルターと8波長のアレイ導波路回折格子(AWG)型フィルターを直列に接続した新構造を用いることで,挿入損および波長クロストークの劣化問題を解決して高性能化を実現した。
また,今回開発した高い寸法精度の微細加工プロセス技術を適用することで,従来のAWG型フィルタを多波長化する場合の素子サイズの増大問題を解決し,光回路チップの小型化に成功した。さらに,偏波無依存合分波動作を実現するため,波長多重化された光信号を2つの偏波成分に分離した後に16個の波長成分に分離し,波長ごとに偏波成分を出力する光回路を開発した。
そして,この波長多重光回路に任意偏波の32Gb/s高速光信号を伝送した場合も,16波全ての波長について光信号の劣化なく合分波が可能であることを実証したという。
研究グループは,同じ機能を待つ波長多重光回路を従来のガラスで作製した場合,サイズが数センチメートル角まで大きくなるが,この光回路を用いることでサイズを数ミリメートル角に縮小でき,光電子集積インターポーザーに適用することが可能になるとしている。